第144話 ◆熾烈な販売競争

◆熾烈な販売競争


何十年か前には、向こうの世界でも薬の訪問販売は普通に行われていたらしい。


越中富山の薬売りの話しは、おばあちゃんだったからか聞いたような記憶がある。


今はドラッグストアがあちこちにあるし、夜遅くまでお店が開いているので、薬が急に必要になっても何とかなっちゃう。


しかも夜間の急患は、救急医療センターなどで対処してもらえる。



しかし、こっちの世界は100年近く遅れているようなので、家庭にはまだ常備薬が欠かせない。


あたしは、どんな薬が売れそうかメイアと検討して、風邪薬と解熱剤(実はアレが入っている)や整腸剤を多めに用意した。


1日目はリサーチなしで、予想した商品で勝負である。




一方、ニーナ&アリシア ペアは、造船業に従事している人が多いということで、筋肉痛に効くという飲み薬(実はアレが入っている)とシップ薬の品揃えを充実させたようだ。


ププッ  山の手のお屋敷に住んでいる方たちは、管理職が多いんじゃないですかね~。


勝った!  メイア、初日はあたし達の勝ちよ!   おー ほっ ほっ ほっ ・・・ 


じぃーー


メイアが、じと目であたしを見てるぅーーー



や、やだな、メイアったら。  一度やって見たかっただけだよ。  漫画でよくあるんだってば、こういうの!


えっ?  漫画ってなに?って・・・  ま、まぁ、あとでゆっくり教えてあげるから、もう行こうか。


あ~あ、余計なことをやらなければ良かったし!



・・・


さて、2チームいよいよ出発である。


あたしとメイアは、まず造船所に近いエリアから、訪問販売を始めた。


コン コン コン


は~い。 どちらさまかしら?


こんにちは~  薬売りです。 お宅の常備薬で足りなくなったものはありませんか~?


ああ、ちょうどよかったわ。  主人の筋肉痛が酷くて、飲み薬とシップ薬がもうあと少ししかないの。


はい、それではお幾つ必要でしょうか?


そうね、それじゃ、飲み薬を2瓶とシップ薬を20枚もらおうかしら。


はい、わかりました。  メイア、お薬を出してくれる。


わかった~


あら、まぁ。  かわいいお嬢ちゃんだこと。  お母さんのお手伝い、偉いわね。


あっ、しまった!  メイアをニーナに変化させるの忘れてた。


あ゛ーー これじゃあ、旦那に逃げられた哀れな女の薬売り確定じゃないか。


でも、意外に受けがいいから、しばらくはこれでいいか。



しかし、いきなり筋肉痛関係の薬かぁ・・・  もっと持ってくれば良かったな~。  もう残り少ししかないや。


次はお隣のお宅だね。



トン トン


こんにちは~  薬売りで~す。


よかった、昨日から子どもが熱を出してるのよ。  風邪薬はあるかしら?


はいはい。 これなんかいかがでしょう。 新製品(実はアレが入っている)でよく効きますよ。


苦くないので、お子さまでも飲みやすいと思いますよ。


それじゃ、それを一つください。


はい、毎度ありがとうございます。


小さいお嬢ちゃんを連れて、あなたも大変ね。  頑張ってね。


あ、ありがとうございます・・・  (やっぱり、そう見えてるし!)



こんな感じで、午前中は結構売れた。


これは、ニーナ&アリシア ペアをかなりリードしたんじゃないか(満面の笑み)。



しかし、意に反してニーナ達は、なんとあたし達の2倍近くを売り上げていた。


山の手のお屋敷なのに、どうして筋肉痛やシップ薬が売れたんだろう?


後で分かったのだけれど現場で働く人は残業も多く、交代制勤務なんかもあって給料が多いらしい。


結果、けっこうなお屋敷に住んでいるんだそうだ。


あたしのリサーチ不足とは言え、ちょっとショックを隠し切れない。



やったぁ! セレネたちに勝ったーーーーー


おー ほっ ほっ ほっ


アリシアが高笑いで勝利宣言をする。



ま、まだまだ。  1日目の午前中じゃ、勝ち負けなんか決まらないわ!


みてなさいよ。  絶対に勝つのはあたし達なんだから。  (この時点で負け犬の遠吠え状態)



そして、結構頑張ったのに、この日の売上の差は縮まるどころか3倍になったのだった・・・



うう゛っ  ぐやじぃーーーーーー!

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