第136話 ◆海賊の宝(その1)

◆海賊の宝


もうすぐ次の港に着く。 


今度訪れることになる国は、どんな所だろう。


そんな事を思いながら海鳥の群れをを眺めているとモッフルダフがやって来た。


セレネさん、退屈してませんか?


ま、まあ退屈と言えばそうね。 船に乗ってては、どこにもいけないし毎日することがないもの。


ホッ ホッ ホッ


それならば良いことを教えてあげましょうか。


ほら、来た。 いい、聞かない!  嫌な予感しかしないし。


残念ですね。  海賊の宝物の在りかを知りたくないなんて・・・


『・・・海賊の宝ですって。  何それ、面白そう』  あたしは心の中で興味を惹かれているのを感じている。


それでは、この件はなかったことにしましょう。


モッフルダフってずるいわ! そんな面白そうなことを最初に言わないなんて!  一応聞くから話してみなさい。


ホッ ホッ ホッ


実は、今度立ち寄る港から割と近くに、昔から「海賊の島」と呼ばれている小さな島があるんです。


な~んだ。 それじゃあ、宝物なんてとっくに誰かが見つけちゃってるんじゃない。


それがですね、まだ誰も発見したという記録もないし、そういう話しも聞かないんです。


ばかみたい。 じゃあ、本当に無いんじゃないの。


本当に無いかは探してみなければ、分かりませんよ。


実は昨日、アルビン達と話しをしていましたら、その島には干潮時にしか入れない穴があって、そこが島の秘密の入江に繋がっているらしいんです。


でも、それならやっぱり誰かが先にそこに行ってるはずじゃないの?


そこですよ!


その島に近づくと人魚族が邪魔をするので、その入江に入ったものは未だかつてないのだそうです。


人魚族って・・・ モモちゃん・・・


そうです。 セレネさんが首にかけているネックレスは、人魚族の印。 言わば入江へのフリーパスです。


こ、これが・・  あの千葉にあっても東京と付く超有名な遊園地の年間パスポートみたいなものだって言うの・・


あたしは、首にかけたネックレスをしげしげと眺めた。



どうです?  ネックレスの力は、島に近づいてみればわかりますよ。  


でも、仮に島に上陸できたとしても、もう宝物は人魚族の物になっているんじゃないの?


セレネさんは、宝物がどんな物なのかだけでも見たくないのですか?


退屈凌しのぎには、ちょうど良いくらいの刺激じゃないでしょうか。



でも、モッフルダフの話しに乗るといつも碌ろくなことにならないんですけどー!


ホッ ホッ ホッ


それなら無理には勧めませんよ。  でも退屈なんですよね。


うっ・・


わ、わかったわ。  考えておく。


ホッ ホッ ホッ


モッフルダフはそう言うだけ言って、笑いながらキャビンの方へ去って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る