第125話 ◆入港(男は狼なのよ)
◆入港(男は狼なのよ)
あたし達は、モッフルダフの船に乗せてもらい、当初の目的地である大陸の7つある国の中で、まりあ先輩の国が戦争の際に中立の立場を取った国へ向かっている。
この国に行くためには、国境線となっている8千m級の山脈のため、海上を行くしか方法がない。
この国は、この山脈のせいで他国から攻められることが無いが、他国と交易を行うためには海上交通に頼らざるを得ない。
そして、この国の海岸線は千m級の断崖が続くのと近海は浅い海で岩礁が多いため、それらを避けていったん「く」の字上に大きく海を迂回していく。
この浅瀬と岩礁の大半は巨大サンゴ礁でできているらしく、モッフルダフの船もいったんこの広い海の真ん中近くまで出て行かなければならなかった。
そして、その途中にあの忌々しい巨大烏賊に遭遇したのだ。
まりあ先輩から借りた船は物の見事に大破沈没させられ、エイミーとリアムは大怪我を負ってしまった。
あたしは運よくスカートが窓枠の板に引っかかったため、ちょうど飛び込み競技の選手のような体制で、手と頭を下にしてぶら下がってから落下したので、少し頭が痛いくらいで済んだ。
ほんとうに幸運だったが、大切な制服のスカートが破れて脱げてしまい、パンツまる見えの恥ずかしい姿で漂流しなければならなかった。
・・・
あたし達は、もうすぐ目的地の8千m級の山脈に囲まれた国の港へ到着する。
この国は三方を高い山脈に囲まれ、海岸線も千m級の断崖が続く。
従ってこの国には港は3つしかなく、そのうち大きな船が入船できる港は2つのみだった。
また、大きな港はその半分以上を海軍が使っているため、商船が行き来する桟橋は常に満船状態で、下手をすれば港の沖で何日も待たされるが、今回は運よく入港ができた。
この国は海産物以外にも農業が盛んで特産物は、穀物や野菜、家畜類(肉)、乳製品などが多いとモッフルダフから聞いた。
だとしたら、この国で仕入れる物は、あまりないのでガッカリする。
なぜなら穀物類は別として、長い船旅で運搬中に傷んでしまうものは、商品としては扱うことができないからだ。
・・・
モッフルダフは、巨大烏賊との闘いで大砲の弾を結構使ってしまったため、弾の補充をすると言って武器屋を見て回っていた。
エイミーとリアムは治療に専念するため、船で留守番だ。
せっかく二人きりになれる機会だが、怪我をしていたらイチャイチャできないので、ちょっとざまぁな気分だ。
それで、あたしの最初の任務は、女性用の服と下着の購入だ。
エイミー、ニーナ、アリシア、自分と結構な金額になりそうだが、モッフルダフから十分な金額を貰って来たので、この際いろいろ買っちゃおうと思う。
港町は、どこの国でも活気があって楽しい。 お店も多く商品も豊富で、歩いて見て回るだけで超楽しい。
女子のこの気持ちを理解できない男子は、残念ながらモテないから、よく覚えておくと良い。
一緒に歩いていても、つまらない素振りを見せずに、女の子が楽しそうにしているのにちょっと共感してるふりをすれば大モテ間違いなしだ。
例えば雑貨屋で、彼女が「ねぇ、これ超カワイイーー」っとニコニコにていたら、「俺も欲しい!」とか言っておけばいいのだ。
この授業料は結構高いからね。
・・・
2時間ほどお店巡りをしたら、みんな両手にいっぱい荷物を持っている状態になったので、いったん船に戻ることにした。
途中にあった飲食店で、おいしそうな物を少しずつ買って帰る。
エイミーとリアムがお腹を減らして待っているだろう。
アルビンとスヴェンとラッセの3人組は、上陸早々モッフルダフと酒場に飲みに行っている。
つまり、いま船にはエイミーとリアムの二人だけだ。
しかも、エイミーはポンチョは着ているものの、その下は下着をつけていない。
でも、いくらなんでもリアムもそこまでは、ケダモノじゃないだろう!
・・・
しっ!
みんな静かに!
あたしは、そっとエイミーの部屋の前で、耳をそばだてた。
あっ・・・
やっ・・・
ふぅ~
はっ・・
う~ん、これは間違いなく盛さかってらっしゃる。
リアム(おとこ)は、やっぱりケダモノじゃん。 これなら獣人と同じレベルだな!
ほらっ、「男は狼なのっよ、気をつけなさっい」っという、歌謡曲が昔あったじゃないか。
ときどき、まばらに記憶が甦るのが不思議だ。
あたしは買って来た食べ物を袋に入れ、メモを付けてドアノブにかけた。
メモには、「行為がお済になったら、召し上がってください」と書いた。
これで、動物柄のポンチョの件も合わせて、エイミーも早く元気になってくれるに違いない。
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