第124話 ◆ポンチョは風に弱い

◆ポンチョは風に弱い


エイミーは、少し元気になってきた。


痛みもだいぶ和らいできたようだ。


なぜなら、大切にしていた服を切り刻まれたことを、ウダウダ言えるようになってきたからだ。


だって、あの状況では仕方がないじゃないか。



アリシアは回復魔法を使ったと言っているが、アニメで見たように直ぐに治るものではないらしい。


ニーナも同じような仕草をしていたが、アリシアの魔法とは違う性質のものみたいだった。


まあ、難しいことは分からないし、こっちの世界では、そういう科学的なことはまだあまり研究されていない。


だから、理屈や理由を理解しようとしたり悩んでも仕方がないのだ。


ついでにあたしのパンツを乾かす魔法は無いのか、こそっと二人に聞いてみたいけど、いきなり火炎系魔法を使われても困るので諦めた。



いつまでもエイミーを全裸のまま甲板に転がして置くわけにもいかないので、モッフルダフに積荷の中に女性物の服や下着は無いか聞いてみた。


結果、そんなものがあるわけが無く、仕方が無いので商品の布地を譲ってもらい、首が出る穴をあけてポンチョを2着作った。


今のところ気候は温暖で、シャツ1枚でいられる気温なので、しばらくはこれでもよいだろう。


ただし、強い風には気を付けなければいけない。



エイミーはまだ動けないので、ヘンテコな動物柄の方のポンチョを着せる。


あたしは、無地の布で作ったお上品な方をかぶってから、濡れてしまったパンツをそっと脱いだ。


これは、水で洗ってエイミーにみつからないように、干しておこう。  なんといっても貴重な女物の下着だ。



エイミーにポンチョを着せたので、もうこっちに来てもいいよとリアムに伝える。


あっ、そういえば、リアムも骨折してたんだっけ?


お~い、アリシアーー、ニーナーー  リアムも診てあげてくれるかなーー


えーーーっ  ムリ。  つうか、男は自力で治した方がいいと思うーー。


二人からは、つれない返事が返ってくる。



おやおや、 だっ、そうです。  リアムさん残念でした。


おぅ、こんなの怪我のうちには入らないさ。  見てくれよ、これっ!


そういうリアムの足には、自分で作った添木がエイミーの服の切れ端でしっかり右足に固定してあった。


あとでエイミーに見つかったら、左足も無事ではすむまいに。


あたしとしては、エイミーが自分の来ているポンチョの柄に気づいた後に、ぜひリアムの簡易ギブスを発見して欲しい。


だって、退屈な航海では、少しでも刺激が欲しいじゃないか。 



全員なんとか無事なことも確認でき、少しずつだけど落ち着きを取り戻しつつあった。


まりあ先輩から借りた船は、あの烏賊の所為で大破沈没してしまった。


おまけに仕入れた商品も海の藻屑と消えてしまった。


あたしは、この時点で無一文になった。  異世界でのすごろくゲームは、振出しに戻ってしまったのだ。



こんな時に、暗い顔をしていたら、ますます落ち込んでしまう。


あたしは、少し納得がいかないことがあったので、モッフルダフのところへ向かった。


モッフルダフ、あなたが巨大烏賊を引き付けるから、逃げろっていったのに、結局烏賊はあたし達の船を襲って来たのはなぜなの?


まさか、あたし達を囮おとりに使ったってことはないわよね?



するとモッフルダフは、


あの時は、90%フィアスを襲ってくると判断していました。 なにせ、長年フィアスを付けまわしているヤツですから。


今回は、本当にすみませんでした。  沈没した船と積み荷の代金は、責任もって賠償させていただきます。


えっ、そうなの?  ほんとうに?


はい。 なんでしたら、危険な目に合わせてしまった分も上乗せします。


あっ、いやいや、そこまでしてもらわなくても・・・


あたしは、こんなにも誠実なモッフルダフをちょっとでも疑ってしまったことを後悔した。



その時、強い海風が、サァーーと吹いた。


ぶわっ


あたしが着ていたポンチョが風に煽られて、モッフルダフの目の前で見事に捲れ上がった。


キャァーーーッ


ホッ ホッ ホッ


み、見たわねーーーっ!  100万ミリカ上乗せよーーー!

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