第122話 ◆重症のエイミー
◆重症のエイミー
メイアは、その超越した視力と聴力を最大限に使ってセレネ達を探していた。
最初にエイミーのマグナムから漂う消炎の臭いを感じ取った。
その臭いを頼りに海面スレスレに飛行する。
あっ、あそこ!
アリシアが逸早くエイミーを波間から見つけだす。
エイミーは意識が無かったが、リアムが下から支え、体が沈まないようにしていた。
エイミーは40mの高さから海面に激突したため、肋骨が3本ほど折れ、残りもひびが入るなど、かなりの重傷だった。
また、リアムも右足が折れていた。
メイアは、リアム、エイミー、ニーナ、アリシアと背中に乗せる重量は既に限界を超えていた。
一度下りた海面から飛び上がるためには、いつもの3倍以上の力で羽ばたかなければ、飛び上がれない。
ドラゴンが空を飛ぶ場合は、山の上や崖から滑空するのが普通だ。
今回のように、翼を使って羽ばたくように舞い上がるような飛び方はしないのだ。
メイアは、もうぎりぎりのところで、踏ん張って飛び立った。
あとはセレネが見つかっていないが、どこか陸地を見つけなければ、メイアも力尽きてしまう。
そうなれば全員、助からない。
まずは、早く背中に乗っている仲間をどこかに降ろさなければならない。
それにエイミーも、この不安定な状態のままでは、まずいのだ。
しばらく飛ぶと幸いなことに、メイアは前方に見覚えのある船影を見つけた。
そうあれは、モッフルダフの船だ。
よかった。 早くあそこに仲間を降ろして、セレネを探そう。
船を目掛けて、降下し始めた正にそのとき、自分も弾を装填したことのある船尾の砲門が火を噴いた。
上空から着弾した付近の海上を見れば、セレネがクジラの背中に乗っているのが、はっきり見えた。
メイアには、いま何が起きているのか理解できなかった。
目を凝らしてみれば、船尾ではアルビンとスヴェンとラッセの三人組が、大砲の弾を籠めて狙いを定めている。
メイアが接近するために、さらに旋回しようとした時、二発目が放たれた。
弾はセレネの遥か手前に着弾しているため、差し迫った危険はなさそうだが、早く大砲を打つのを止めなければいけないと思った。
その時、体にかかっていた重みが少し軽くなったように感じた。
首を大きく振って背中を見れば、アリシアが居ない。
慌てて落下したのか確認するが、目の良いメイアにもアリシアの姿は捉えられない。
・・・
アリシアは初めて移動魔法を使った。
ララノアからは、まだ完全にマスターしていない魔法は使わないように言われていた。
これは、ララノアから守らなければならない十項目の最初の方にある、1項、2項に触れるがアリシアは非常事態と判断して10項を優先させたのだ。
(1)ママの言うことを守ること
(2)むやみに魔法は使わないこと
(3)知らない人とは口をきかないこと
(4)日記をつけること
(5)人には親切にすること
(6)人を傷つけないこと
(7)人の悪口はいわないこと
(8)嘘は絶対につかないこと
(9)食事ができたときは感謝すること
(10)自分で考えて行動すること
アリシアは一瞬にして、モッフルダフの船の船尾に移動していた。
アルビンとスヴェンとラッセは、突然目の前に現れた少女に心底びっくりした。
スヴェンは腰が抜け、アルビンは持っていた砲弾を床に落とし大慌てし、ラッセは点火用の導火桿みちびざおを放り投げ危うく暴発火達磨になるところだった。
とりあえず砲撃は出来ない状態となったので、アリシアは三人が落ち着くのを待って、いま砲撃している相手がセレネ達であることを伝えた。
その後アリシアは、メイアに手を振って甲板に降りるよう誘導したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます