第117話 ◆巨大烏賊の襲撃

◆巨大烏賊の襲撃


あたし達が乗っている船と動力源であるクジラ君は、女王様(まりあ先輩)から借りている。


そして、あたし達の船はモッフルダフの大鮫フィアスとそのフィアスに曳かれている中型船の後をついて行くので、遠距離航海とは言え、たいへん楽ちんだ。


普通なら航海士の資格を持ち、海図を読んで正しい航路を進むよう、常に注意をしていなければならない人材が必要だ。


ただし楽ちんとは言え、次からは自分がやらなければならないのだから、模擬的に確認はしている。


けれどもイレギュラーな対応をしなければならない場合は、その都度 冷静かつ正しい方法を迅速に決められなければならない。


あたしは、パニック癖があるので、ここは苦手なところなのだ。


そして、今回の航海で最初の試練が迫っていた。



それは、アリシアが最初に気付いた。


何か、うねうねしたのが海から出て来たよ とあたしに言いに来たのだ。


うねうねという響き自体、もう嫌な感じしかしない。


すぐに此の事をモッフルダフに伝えるようメイアにお願いする。


メイアはドラゴンの姿に戻ると、先行して走っているフィアスまで ひとっ飛びし、モッフルダフにあたしが書いたメモを渡してくれる。


そのメモを見て、モッフルダフは直ぐに何かに気付いたらしい。


メイアに返事のメモを持たせると、モッフルダフの船(フィアス)はスピードを上げた。


あたし達の船を曳いているクジラ君では、とてもついていけないスピードだ。


なんてこった。 モッフルダフはあたし達を生贄として見捨てたのか?


モッフルダフのばかやろーーー!  みそこなったぞーーーー!


船首から大声で罵倒するが、もう聞こえる距離ではないくらい離されてしまった。


そこへちょうどメイアがモッフルダフのメモを銜くわえて戻って来た。


なになに・・ 「うねうねした物は、前に襲って来た巨大烏賊ではないかと思われます。 その場合は、フィアスが確実に狙われているので、こっちに引き寄せますから、その間に逃げてください。 生きていれば次の港でまた会いましょう」。


モッフルダフって、なんていいヤツなんだ!  グスッ


って、一応誤魔化してみるが、メイアは耳がすっごくよかったんだっけ・・・


ふっ ふゅーーっ  空気が出るだけで、誤魔化しの口笛は鳴らなかった・・・



う、ううん  げっほっ  おっほん!


メイア、アリシア、手分けしてみんなを甲板まで呼んで来てちょうだい。


二人は一瞬目を合わせると、二手に分かれてメンバーを呼びに走った。


そして、全員(と言ってもエイミー、リアム、ニーナが加わっただけ)が甲板に集まった。


あたしは、今起きつつある驚異について説明をし、みんなで一致協力して乗り切るための分担を示した。


ニーナとシルフは、メインマスト上で見張り、万一の場合は巨大烏賊を魔力で攻撃。


エイミーとリアムは船尾の砲門を担当。


メイアとアリシアは船首側で見張りと万一の場合は攻撃を担当。


あたしは、船の進路決定と操舵を担当する。


いま、モッフルダフの船は、真っ直ぐ前を走っている。


あたしは、面舵を一杯に切って、船の進行方向を右に振った。


果たしてこの選択が、吉と出るか凶とでるか、これはあたしの幸運の女神様しだいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る