第114話 ◆出航準備(世界の中心でイケメンが欲しいよーーと叫びたい)

◆出航準備


こっちの世界に来てから、いろいろな事を経験した。


ゲームの世界なら、経験値が上がるとかお金が溜まるとか、いろいろおいしい所があるハズなのに、現実はかくも厳しい。


生きるためには、お金が要る。


衣食足りて礼節を知るということわざがあるではないか。


あたしの能力では、着るものも食べ物も自分で一からは作れない。


ならば、お金を出して手にいれるか、悪事を働くかのどちらかである。


あたしは、悪者では無い! と思っている。


こっちの世界で生きて行くために、商売をすることに決めたのだ。


軍資金は、ダンジョンで手に入れた宝物だけど、これは残りが少ない。


商品を仕入れて、その商品を必要としている人に売る。


商品を運搬するのに必要な船やクジラ君は、幸いなことに まりあ先輩が貸してくれている。


でも何れは利子を付けて帰さなければいけない。


そしてそれまでには、自分の船も手に入れなければならない。


生きて行くのは大変なのだ。 今更思う、もっとちゃんと勉強しておけばよかった。


生まれてから高校生になるまで、何とぬくぬく育ててもらっていたことだろう。


居なくなって分かる親の有難みの意味もようやく実感する。 まったく情けない。



モッフルダフから、2週間後に出航するとの連絡をもらったので、全員で手分けして商品の仕入れを始める。


もちろん、エイミーとリアムも同行するし、もしかしたらハネムーンも兼ねるかしらと想像してみる。


もし結婚したら、夫婦喧嘩は殺し合いになるだろうな。




喫茶店のマスターは、時給を3倍にするから行かないでくれと懇願されるが、あたし達だって歳を取るのだ。


おばさんメイドに客は来ないよ、マスター!


前回仕入れた商品は、半値で処分したので痛手だったが、生活費はバイトで賄ったので、軍資金はまだ少し残っている。


仕入れる商品は慎重に選ぶ。 売れ残るリスクがあるからだ。


この港で仕入れることが出来て、他所で需要がある商品は何か。


これは、商売の師匠であるモッフルダフに教えを請う。


あたしが、モッフルダフと一緒に行動する理由の一つはこれだ!


あとは、この世界の事に詳しいのにも助けられているし、戦闘能力も高く結構頼りになる存在なのだ。


こっちの世界に来て早いうちにモッフルダフに会えたのは本当に幸運だったと思う。



出航の3日前に準備が整ったので一休みしていたら、そのモッフルダフが女の子を連れてやってきた。


あれ? どっかで見たような・・・


この子の名前は、アリシアって言うんです。


実は、ララノアさんから自分の子どもにも見聞を広めさせたいので、ぜひ預かって欲しいと手紙をもらったのですが、読んでる最中に本人が来ちゃいました。


自分たちは、アルビンとスヴェンとラッセのおじさん4人組みで、女の子の面倒はみれないため、すみませんがセレネさんにお願いしたいのです。


と、深々とお辞儀をされてしまい断れなくなる。


ララノアさんには、ダンジョンのラスボス戦で助けてもらったこともあり、快く引き受けことにした。


モッフルダフから手紙を見せてもらったら、預かっている間に事故とか戦闘で死んだとしても、それもこの子の運だと書いてあった。


この事でエルフ族の芯の強さの一つの理由が分かった気がした。



アリシアは、ララノアの子どもだが、ハーフエルフらしい。


顔立ちはララノアに似ているので、大きくなったら美人さんになるに違いない。


あたしの周りに、美人とか可愛い系が集まり過ぎている気がする。 


どうせなら、若いイケメンが欲しいよーーーと世界の中心で叫びたい!!

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