第110話 ◆ニーナの能力

◆ニーナの能力


かぎ爪恐竜の2頭がメイアに飛び掛かり、もう一頭がニーナにじりじりと近づいていた。


メイアは1頭目を弾き飛ばすが、ほぼ同時に飛び掛かって来た2頭目に鋭いかぎ爪で胴体を切りつけられる。


ドラゴンはその翼が邪魔になり、接近戦は得意ではない。


地上での動きは、かぎ爪恐竜が圧倒的に素早く、戦いは苦戦を強いられるかと思われた。


が、再び飛び掛かって来た1頭目に、炎を浴びせ焼き殺すとメイアのドラゴンの血が沸騰してしまう。


2頭目は目の前で仲間が焼き殺されたのを目の当たりにして、明らかに戦意を喪失している。


だが自分の体に傷をつけたものを、メイアは許さなかった。


鋭い棘がついた尾で恐竜を打ち払うと、その喉に喰いつき噛み千切ってしまった。


あたしは目の前の惨劇に、ただガクガクと震えていた。



一方、ニーナに襲い掛かった3頭目の恐竜も悲惨な最期を迎えた。


ニーナは襲い掛かる恐竜に対し、以前シルフも使った事がある光の束を放ったのだ。


それは、シルフのものより数倍も強力だった。


その光に当たった恐竜は、一瞬で蒸発し跡形も残らなかった。



少ししてメイアは幼女の姿になって、あたしのところに戻ってきたが、お腹からは血が出ているし、口には恐竜の血がいっぱいついている。


月に一度は血を見る女のあたしでも、流石に気持ちの良い姿ではない。


メイアの傷は、固い鱗のおかげで大した怪我ではなかったので直ぐに塞がったため、口の周りの血を拭いてからそっと抱きしめてあげた。


ほんとうにメイアには何回も助けてもらってばかりだ。


結局、あたし達は水晶の谷には行けず、恐竜テーマパークに怖い思いをしに行ったようなものだ。


しかも帰りは歩いて帰る破目になり、散々な目に合った一日だった。


メイアは怪我までしたので、帰ったらモッフルダフに一発蹴りを入れてやろうとあたしは心に誓ったのだった。


そういえば、シルフは宿に帰るまで爆睡していて、ニーナの能力開花は全く知らない。


のんきな母親には、しばらくニーナのことは秘密にしておいてやろう。

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