第104話 ◆二人のシルフ(その5)
◆二人のシルフ(その5)
セレネ。 セレネの母乳でニーナを育てる。
そうシルフに言われてみれば、赤ちゃんって母親が母乳で育てるよなぁ・・・
なんだかこの歳で普通に母乳が出ることに自分でも驚いたけど、女としては当然なんだよね。
そして、妖精とあたしの間にできた子どもの成長の早さは、驚愕の一言だった。
最初はシルフと同じ身長25cmくらいだったのが、1日目で50cm、2日目で1m、そして3日目には、あたしと同じ背丈になったのだ。
いったいどこまで大きくなるのだろうかと不安に思っていたら、どうやらあたしの遺伝子のせいで、これ以上は伸びないようだ。
せっかく作った服は、当然もう着れないのでシルフに着てもらうことにして、ニーナには、とりあえずあたしの服を着させる。
胸の部分が窮屈そうなのは、シルフの遺伝が悪さをしているに違いない。
ニーナの成長が止まったので、あたしの母乳も出なくなった。 人体は、本当に不思議だ。
成長の早さは、体だけではなかった。 知識の吸収や話す言葉の量とか質も飛躍的に伸びていった。
・・・
・・
・
ママ、今日の朝ご飯は、あたしが作るね。
うん。 それじゃあ、お願いね。
ニーナは料理も上手だ。
それにしても、人間サイズのシルフ(といってもニーナだが)は、この世のものとは思えないほど美しい。
あたしが着ていた服を着せてあるが、これじゃない感が半端ない。
かと言って、船に乗っているのにドレスを着せるわけにもいかない。 (実際にはドレスなんかないけど)
いずれは船を返すために、まりあ先輩の国に戻ることになるので、先輩のところで何か仕事をするのがニーナのためには良いかもしれない。
王立の図書館で司書をするとか医者の勉強をさせるとか、母親としては子どもが幸せに暮らせるのが何よりの望みだ。
・・・
あたし達は、まりあ先輩から借りた船で、モッフルダフの後を追っている。
今回は、陸地の沖を進みながらお隣の国の港を目指しているので、ひと月程度の船旅だ。
目指している国は、まりあ先輩の国とは同盟を結んでいるので、入港審査もすんなり通ると言われている。
おまけに借りている船は、まりあ先輩の王室御用達船なので、超特別待遇のはずである。
せっかく船を借りたこともあり、あたしもこの航海では商売をやってみることにした。
で、今回は先輩の国の特産物である織物、スパイス、果実酒などを積んできた。
関税はそれほど高くは無いと聞いているけど、利益は売上の10%くらいになるが積荷量が少ないため、自分たちの船旅にかかる費用でチャラくらいだ。
商人達は大量に仕入れて売るのだが、保険料も高額で商売のやり方が下手だと大損することもあるらしい。
いろいろ勉強することも多いが、学校の授業なんかよりは実践的で生きていくのには大いに役に立つ。
・・・
ママ、ご飯ができたから、お母さんとメイアちゃんを呼んできて。
は~い。
ニーナは、あたしをママ、シルフをお母さんと呼ぶ。 理由は不明。 なんとなく、そうなったらしい。
朝食のメニューは、シチューとナンのような柔らかなパン、あとは拳くらいの大きさがある半熟ゆで玉子とサラダと豪華である。
あたしは、こっちに来てから2キロほど太った。 魔物と戦っていた時は、結構やせたのにリバウンドして、更に肉が付いてしまった。
船旅は、楽しみが少ないので食べまくるため運動不足になりがちだ。 明日からは、心を入れ替えてダイエットに励もう。
そして、あたしの体重が更に500グラム増えたころ、やっと目的地の港が見えてきたのだった。
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