第103話 ◆二人のシルフ(その4)

◆二人のシルフ(その4)


これからセレネに会わせる。 ちょっとだけ待って。


あ、会わせるって、やっぱり赤ちゃんなの?


ゴソ ゴソ ゴソ

バッグの中に戻ったシルフが再び顔を出した。


んっ?  あれれ?

あなた・・ シルフ?  なんか、顔は同じだけど、どこか違うような・・・


フフッ  それ、セレネとシルフの子ども。

声と同時にバッグから、もうひとりシルフが出て来る。


えっ?  ええーーーーっ!


目の前にシルフが二人並んだ。

ただ違う点が一つだけあった。  子どもの方には羽がない。


羽がない・・・  思わず感じたままが口から出てしまう。


羽が無いのは、セレネの方の遺伝。


でもでも、シルフと同じ大きさだよ。  どっから生まれてきたの?


それは、ないしょ。  セレネ、この子になまえ付けて。


うん、わかった。  それじゃあ、いい名前を考えるから少し時間をちょうだい。

でも、先にお洋服を作らなくっちゃね。

いくら小さいとはいえ、全裸は目のやりばに困る。  ついでにシルフのも作ってあげよう。


・・・

・・


あたしは、二人の洋服を作りながら、子どもの名前を考えた。

女の子の名前なので、やっぱり可愛いのがいいな。


あれこれ考えた末に、決めました。

じゃじゃーん。  命名します。 あなたの名前は、ニーナちゃんで~す。

シルフどう?  気に入った?


うん。 カワイイ。


で、シルフさん。 二つ聞きたいことがあります。

一つ目は、ニーナちゃんは、あたしの子どもに間違いないのですね?


コク コク


ふ~む。 では、二つ目です。  どうやったら、妖精とあたしの子どもができるのでしょうか?


それは・・  シルフが言い淀む。


それは?


KISSしたから。


んーーー  ほっぺにチューしたら、子どもができるのかな~?


・・・


チューする度に子どもが出来るなら、これからはもうKISSはできないなぁ・・・

ちらっ とシルフを見ると珍しく、ダラダラと顔に汗をかいている。

おぉ 困ってる、困ってる。  勝手に子どもを作った罰に少しイジワルしてやるのだ。


ごめんなさい。 シルフ、セレネの子ども欲しかった。 だから、特別なことをした。


わかったわ。 KISSだけでは、子どもは出来ないのね?


コク コク  首を縦に振る。


じゃあ、約束してくれる?  子どもが欲しいときは、必ずあたしに相談すること。 いい?


わかった。 相談する。



でもさ、ニーナって羽があったら、シルフと見分けがつかないくらい、そっくりだね。


ニーナは、シルフが二つになったから、そっくり。


あたしは「こっちの世界では、自分自身が分裂して増えるのもいるぜ」とリアムが言ってたのを思い出す。

どうやら、妖精はこのタイプなのかも知れない。

あたしは、17歳で母になってしまった・・・


ほらほら、ニーナちゃん。  こっちこっち、お母さんのところにおいで~

ニーナは元気いっぱいに、あたしに向かって駆けてくる。


グハッ


ニーナはおてんばさんだった。  駆けてきて、いきなり鳩尾にドロップキックは、さすがに堪えるぜ。

すぐさまとっ捕まえて、くすぐりの刑に処する。


キャッ キャッ


フフフ 可愛い 


しばらくニーナと遊んでいたら、体にしっとり汗をかいてしまった。

あれっ?  なんだろう。  胸のところが染みてる・・・  

こ、これって、もしかして母乳?


セレネ、それでニーナを育てる。  シルフがそれが当然といったような顔で、 うんうんと頷いている。


えええーーーーーっ!


驚いている間に、ニーナがあたしのオッパイを見つけて、さっそく吸ってるし!


やっ んっ・・  あぁ・・  な、なんだかへんな感じ。


そしてこのあと、あたしは、驚愕の事態に直面するのだった。

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