第102話 ◆二人のシルフ(その3)

◆二人のシルフ(その3)


だって、KISSすると結婚しますって意味なんでしょ?

アハハ  普通はKISSぐらいで結婚なんてしないだろ。  実はもっとヤバイ話しなんだよ。

ヤバイ話しって?


つまり、妖精にKISSすると子どもが生まれるっていうことだよ。  ちょっと信じられないだろう。

こ、子どもって・・・ それって妊娠するっていうこと?

そう、そう。 でもよ、ディープなKISSをしなければ、遺伝子(DNA)が取り込まれないから大丈夫らしいぜ。


セレネは、大丈夫か?

あたしは・・・  してない、してない、ディープは絶対にない!


あのな、妖精ってやつは花の蜜を吸うんだ。 蜜を吸うときに使うストロー状の舌に似た器官がもう一つ別にあるらしい。

な、なにが言いたいのリアム。

だから、知らない間にだな、それが挿入されるんだ。  それが妖精たちの受精手段(SEX)なんだと。


・・・ ま、まさか・・・


まっ、子どもが出来たって大した事ないじゃねぇか。  子どもは可愛いぜ。

で、でも・・  女どうしで子どもだなんて・・・


こっちの世界では、雌雄同体なんていっぱいいるし、自分自身が分裂して増えるのもいるぜ。

モッフルダフだって、あの体だからな。 


気が付けば、あたしはリアムの言葉を最後まで聞かずに、廊下に飛び出していた。


はぁ はぁ・・  そんな・・・ じゃあ、今シルフがバッグに籠ったのって・・・ 出産?


あたしは、部屋に戻るとシルフが入っているバッグに駆け寄って、シルフに声をかけた。

ねぇ、シルフ!  あなた、お腹に子どもがいるの?

でも、脱皮した時と同じで、中からはシルフが動く気配や声は聞こえてこなかった。


はぁ~ やっぱり3日間待たないとダメか。  もう、ため息しか出てこない。

いままで、シルフの事を嫁だ嫁だと言っていたけど、もしかすると本当の嫁になるかも知れない。

しかも自分が嫁に行く前にだ。  もうめちゃくちゃな状態じゃないか。


そして、シルフが籠っている3日の間は、メイアもあたしの様子がおかしいのを察知したのか、すごくおとなしかった。

・・・

・・


そして、運命の4日目の朝がやって来た。


あたしは、一晩中眠れなかった。  そして、明け方からバッグの前に座ったまま、その時がくるのをじっと待っている。


あたしが動かないので、メイアが朝食を作ってくれたのだけど、これはゲロマズ飯なのだ。

これはメイアが料理下手とかじゃなくて、ドラゴンとあたしの味覚差の問題だから仕方がない。

せっかく一生懸命に作ってくれた朝食なので感謝して、ありがたくいただく。  でも、バッグの中が気になって食欲がいまいちわかない。


ガサッ


あっ!  いまバッグが動いた。


じぃっと見つめていると確かに30秒に1回くらいの間隔で、バッグが揺れる。

生まれたら、おぎゃー とか産声が聞こえるのかな?


ガサ ガサ


だんだん揺れる間隔が短くなって来る。  もう直ぐかな~  だんだんワクワクして来る。

お産の時に分娩室の前でソワソワしながら待ってるパパさんの気持ちが良く分かる。

バッグが揺れ始めてから、1時間が過ぎようとしたころ、揺れはMAX状態になった。


ガサ ガサ ガサーー  ガクン


バサッ


バッグの「かぶせ」部分が中から押し上げられて、シルフが顔をだした。

あたしと目が合うと、ニコッと笑う。  うん、可愛いよシルフ。

どうやら、桃色の小さな斑点は消えているみたいだ。


で?  シルフ、あなたバッグの中で3日間なにしてたの?

これからセレネに会わせる。 ちょっとだけ待って。


えっ、会わせるって、もしかしてやっぱり赤ちゃんなの?

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