第83話 ◆大陸へ渡る方法(その3)
◆大陸へ渡る方法(その3)
港湾の管理所ではリアムとエイミーが、モッフルダフの名前が載っていないか、分厚い台帳を片っ端から調べていた。
あたし達は、近くのお店で買ったソフトクリームを舐めながら、二人に気づかれないように窓から中をそっと覗いてみている。
どうやら左のページをリアムが、右のページをエイミーが見て行るようだ。 確かにこの方が効率がよいと思う。
でも、わざとかも知れないがエイミーの左胸がリアムの右腕に当たっているので、リアムは気が散って当然調べる速度が遅くなっている。
エイミーは、かなりの巨乳だ。 あのぷにょんとした乳が腕にあたって、動揺しない男がいないはずがない。
この町を出る前に、エイミーはきっとリアムを落とすつもりなのだろう。
あたしとしては、お似合いのカップルだと思っているので、こんなまどろっこしいやり方でなく、いっそどっちかが襲ってしまえばいいのにと思う。
さてと内輪の恋バナは、このくらいにして、とっとと探してもらうことにしよう!
あっ! これっ!
エイミーが開いていたページの下面をゆび指す。
おっ、これだな。
やったぁーーー みぃつけたーーー! イエーーーイ! パチッ
二人してハイタッチしてる。
ふふん。 イチャイチャですな~ お二人とも!
きゃっ
おわっ
急に後ろから現れたあたし達に慌てふためく二人がおかしかったので、クスクス笑ってしまった。
なによーー セレネったら。 もぉ・・ いいところだったのにぃーーー。
おい! エイミー、誤解を招くようなこと言うなよ。 リアムは恥ずかしそうにデレている。
うっぉほん。 で、見つかったのね?
セレネ、これっ。 ここを見てよ!
エイミーがゆび指した台帳のページを見れば、確かにモッフルダフという名前とその横に種類は鮫、その名前はフィアスと記されている。
ほんとにあったね~。 すごいよ。 よっ! さすがリアム。 イエーーーイ! パチッ
あたしは、ちょっと調子に乗ってはしゃぎすぎた。
エイミーがムスッとした顔をしてる。 この娘は気持ちがすぐに表情に出るので分かり易い。
ごめんなさい。 嬉しくて、はしゃぎすぎましたぁ。 あたしは、ジェラシー・エイミーに向かって手を合わせた。
この後、管理所の係りの人にモッフルダフの事を話して、フィアスに伝えたいことがあると、みんなで一生懸命説明した。
係りの人は最初はモッフルダフ本人でないとフィアスを呼ぶことは出来ないと渋っていたが、金貨を2枚上げたら急にOKになった。
ちょっと嫌だったけど、この際仕方が無いよね。
係りの人と一緒に船が泊まっていない一番大きな桟橋の突端まで行き、持って来た銀色のホイッスルに似た笛を沖に向かって強く吹いた。
ピィーーー ピィーーー ピィーーー
しばらく待ってみるが、フィアスどころか海鳥さえ寄って来ない。
その後も30分ほど待ってみたが何も起きないので、お昼ご飯でも食べに行こうかと皆で話していると、急に目の前の海が渦を巻き始めた。
渦はだんだん大きく、そして激しさを増して行く。
あたしは渦の中にフィアスが居るのか確認しようと桟橋から大きく身を乗り出した。
すると渦の中心から勢いよく大鮫の頭が飛び出して来て、あと少しで思いっ切りぶつかるところだった。
水面高く飛び出した鮫が再び海中に沈むと、鮫が押しのけた海水が大きな波を立てる。
おぉぉーーーっ
その波が桟橋にどっと押し寄せて来て、みんなが一斉に流されそうになる。
エイミーとあたしは咄嗟に係船柱ボラードにつかまって波をやり過ごしたが、リアムと係りの人は流されて海に落ちてしまった。
二人はすぐに桟橋に這い上がってきたが全身ずぶ濡れになっている。
フィアスは潜ったままで、まだ上がって来ない。
エイミーはリアムが風邪を引くかも知れないと心配しているので、係りの人と三人で先に帰ってもらった。
そしてあたしは、フィアスを呼ぶ笛を借りて首に下げ、シルフとメイアの三人で桟橋に残ることにしたのだった。
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