第61話 ◆最強の剣オリハルコン

◆最強の剣オリハルコン


間違いない。  犯人はこいつだ!


男は、ゆっくりとあたしの方に向きを変え、ニヤリと笑った。

右手には、小ぶりの青竜刀を持っている。 そして左手にはあたし達から盗んだ宝物を入れた袋を握りしめていた。


それを返しなさい!  


小娘どもが・・ これがおまえ達の物だという証拠でもあるのか?


それは、あたし達が昨日ダンジョンで見つけた物よ!  仲間が品物の特徴を帳面に記録しているから一緒に来れば分かるわ!


なんだ。 ダンジョンにあったのなら、おまえたちだってそれを盗んで来たってことだろ。 違うか?


・・・ あれっ?  そう言われると・・・


それ見ろ! 反論できないだろう!


違う、違う。 あたし達は、ダンジョンの魔物を倒して、その宝物を発見したの!  宝は発見したあたし達に所有権があるのよ!


だったら力ずくで取り返してみろっ!  男は凄みのある声で威嚇する。


相手は人間なので、もしメイアが手出しをすれば、最悪命を奪ってしまうかも知れない。

メイアは、下がっていて!  何もしてはダメよ。


そうこうしている間にも、辺りはだんだん暗くなってくる。


男も進展しないこの状況に焦り始めていたのだろう。  遂に持っていた青竜刀を振りかざし、あたし目掛けて向かって来た。


咄嗟に腰の短刀を抜き身構える。


そこをどけーーーっ!

男は叫びながら渾身の力で青竜刀を振り下ろして来た。


あたしはそれを短剣で受けきったつもりだったが、青竜刀が短剣に当たった衝撃が全く感じられない。

次の瞬間、ドサッという音とともに真っ二つになった青竜刀の片方が地面に突き刺さった。


オリハルコンという金属でできていると聞いていたが、あたしの剣は凄まじい切れ味だった。 例えるなら包丁でお豆腐を切るようなものだろう。


男は二つになった青竜刀を見て真っ青になり、宝の入った袋も落としたまま、丘の上に続く道をすごい勢いで駆け去っていった。


あ゛ーー  メイア 怖かったよーー

緊張が一気に解けたあたしは、腰が抜けてその場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。


メイアは、直ぐに傍に駆け寄って来て、あたしの頭を撫でてくれた。

いつもあたしが、してあげていたのだけれど、今だけはメイアがお姉さんぽいやと思った。


少しして落ち着いたので宝物の入った袋を拾い、メイアと手をつないで来た道を引き返すと、20分ほどで宿屋に着く事ができた。


あたしとメイアが宝物を持って帰り、みんなに犯人の事を話すと、やはりこの宿屋に泊まっていた商人の人相や背格好と一致する。

商人が宿を出た時間からも、犯人はその商人だろうということになった。


宝物も無事にもどり、モッフルダフも元気になってよかった。

これで今日も晩御飯がおいしく食べられそうだ。


あれっ?  なにか忘れている気が・・・

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