第60話 ◆犯人発見

◆犯人発見


いったいメイアはどこにいったのだろう?

確かに宿屋から外へ出ていくところまでは見えていたのだが、建物の裏手にでも回り込んだのかな?


メイアーー  どこにいるのーーー  メイアーー


雨が小降りになってきたのは、よかったけど足元がぬかるんで歩きにくい。

そういえば向こうの世界では、道は全て舗装されていて土や石ころの道なんか見たことがなかったな。

泥んこに道に慣れないあたしは、下ばかり見て歩いていたので、エイミーに声をかけられるまで全く気が付かなかった。


セレネ、こんなところで何をしているの?

ああ、エイミー。 倉庫の方は大丈夫だったの?

うん。 鍵はかかってたんだけど念の為に開けて確認してみた。 全部OKだったよ。

そう。 良かった。  ところで、こっちにメイアが来なかった?

うううん。 見なかったけど、喧嘩でもしたの?

いやいや、実は犯人の匂いを追っかけて外に出て行っちゃってさ~。 それで探してるところなんだ。

そっかぁ・・  メイアちゃんドラゴンだったもんなぁ。 それで、犯人の目星はついたの?

いや、ぜんぜん。 今のところあたし達の部屋に、あたし達以外の人の匂いが残っていたってことが分かっただけだよ。

・・・

あーーそうだ。  メイアなんだけどさぁ。 さっき部屋で見たとは思うんだけど、いまの見た目は140センチくらいの女の子だから。


なんだ。 それじゃあ、さっきのがメイアちゃんだ!

えっ、 メイアを見たの?

うん。 そのくらいの背丈の女の子が、少し前に向こうの丘の方に走って行ったよ。

エイミーがゆび指す方を見ると、確かに小高い丘が見えている。


早く見つけないと、もうすぐ暗くなって来る時間だ。

人間の女の子ではないので、ものすごく心配なわけではないのだけれど、なにしろメイアと最初にあった時は、怪我をしてたのでドラゴンでもそこそこ心配ではある。


あたしも一緒に探しに行こうか?  エイミーがじっと見つめて来る。 

あっ 大丈夫。 それよりエイミーずぶ濡れじゃない。  早く部屋に戻って着替えないと風邪引くよ。

探すのはあたし一人でも大丈夫だから。 ねっ?

わかったわ。 じゃあ気を付けてね。


エイミーと別れてから、丘に向かって少し歩くとメイアの足跡を見つけた。

その跡を辿ってさらに少し進むと別の大きな足跡と合流しているではないか。

こっちの大人の足跡がきっと犯人のだ。 あたしは確信する。


武器は腰に付けたオリハルコンの短剣だけだ。  人間を相手に刃物を使うのは、自分が犯罪者みたいで嫌だけど、いざとなったら仕方が無い。


二つの足跡の上に、さらにあたしの足跡が重なって行く。


しばらく登って行くと微かに人の声がする。

その方向に走って行くとメイアと大柄な男が対峙しているではないか。

二人は睨みあったまま、ピクリとも動かない。


あたしはメイアが心配で、その場に大きな声をあげながら割って入る。

メイア! あぶないから、こっちに来なさい!


その声に男は、はっとしてあたしの方を見た。

その手には、黄金に輝く宝物が入った袋が握られている。   間違いない。  犯人はこいつだ!

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