第36話 ◆エイミー

◆エイミー


シルフもメイアも銃を見たことはないはずなのに、それが危険な物であるということは本能で分かるようだ。


シルフはともかくメイアが幼女の姿では、どこまで戦闘力や防御力があるのか予想できない。

こんなに、ぷにぷにな体で銃弾を受けたら、ヤバイかも知れない。


二人とも銃口を見つめながら、尋常ならない空気を醸し出している。



ドアがゆっくりと開き、あたしに銃を向けていた人物の姿が明らかになる。

そこに銃を構えて立っていたのは、予想外の若い女性だった。


そのままの恰好で、動かないで!  動いたら引き金を引くわよ。

その鋭い眼光が本気度合いを現している。


待って! あたし達は怪しい者でもないし、あなたに危害を加える気はないわ。

昨日、初めてこの島に着いて、此処のことは何も分かってないの。

だから食べ物や水を売っているところを聞きたいだけなの。


女性は銃を構えたまま、あたしとメイアを交互に見て危険がないとわかったのか、銃をゆっくりと降ろした。


今のは、ほんとうのことなの? 


ほんとうよ。 昨日はもう少し北の方で大蛇に襲われて、ここまで避難してきたところなの。


大蛇に・・・ あいつらが、ここら辺の家畜を襲うので村の人たちはもっと南の土地に移っていったわ。

あたしたち家族も明日には、ここを立つ予定なの。


そうなんですか・・・ ここも安全じゃないってことですね。


荷造りの最中で散らかってるけど、疲れてるみたいだし、よければ家なか中に入って。


女性はエイミーと名乗った。 まだ17歳なのに妹と弟の3人で暮らしているそうだ。

父親は大蛇に殺され、そのあと母親が懸命に働いたが、次の年に病で亡くなったらしい。


残り物だけど、よかったら食べて。 そういって、スープとパンをテーブルに並べてくれた。

ありがとう。 お腹がすいてたのでとっても嬉しいわ。

スープは、予想していたより、ずっと美味しかった。 ほぼ同じ歳なのに料理上手なのがうらやましい。


エイミーたちは、もう少し南で安全な土地を目指して明日出発すると言うので、あたしたちも同行させてもらうことにした。

まだ小さな兄弟を連れて行くので、エイミーもあたし達が一緒なら心強いと言って笑った。


でも、どうみても、JKと幼女とちっちゃな妖精が頼りになるようには見えないだろうから、気を使ってくれてるのだろうな。


エイミーが話してくれたところによれば、目指している土地に行くのには、危険な場所を幾つか越えなければ行けないそうだ。


一つ目は、魔物が住んでいる密林。 二つ目は火の山の洞窟。 そして三つ目は荒くれ者が大勢いる鉱山。


考えただけでも、気が重くなる。

こんな危険があるのに移住する決心をしたのだから、此処はそれ以上にヤバイってことなんだろう。

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