第13話 ◆悪人

◆悪人


どこまでも真っ直ぐに続く道を歩き続ける。 メイクル村を出てから3時間ほど経ち、赤い星も頭の上近くに来ていたので、木陰でランチにする。


ここのところシルフは、いつもあたしの胸の上に乗って、さぼってばかりいるので少し太ったようだ。

妖精でもスタイルは気になるらしく、せっかくの美味しいパンを食べようとしない。


シルフ、たくさん食べても、適度に運動すれば太らないよと教えてあげるが、首を横に振る。


じゃあ、全部食べちゃうからねと言うとプリプリ怒りだす。 怒っているシルフがなんだかカワイイので、ついつい意地悪してしまう。


ようやくシルフがパンを食べ始めたとき、メイクル村の方から馬車がやって来るのが見えた。

馬車と言っても車を引いているのは、馬ではない。 それは、あたしが初めてみる動物だった。 ちょっと見ると角が生えた豚のように見える。


馬車はあたし達の前を通り過ぎて行くとばかり思っていたら、目の前で急に止まった。

荷台から、顔つきの悪い3人の男たちが降りて来た。 シルフは食べかけのパンを持って木の上に隠れた。


男たちはメイクル村の雑貨屋から、あたしの指輪を買ったことを聞いたらしく、他にも珍しいものを持っていないかが知りたいらしかった。


あたしがブレスレッドを見せると嬉しそうにニヤリと笑った。

それと同時に、後ろにいた男があたしの鞄を奪い取り、さらにもうひとりが、突然殴りかかって来た。


あたしは反射的に拳をかわし、その手を引いて投げ飛ばした。  思い出した! あたしは合気道を習ったことがある。

でも残念なことに初心者だったのかも知れない。 違う男に後ろから鞄で思いっきり頭を殴られ、その場で気を失ってしまった。


あたしはロープで縛られ、荷台に放り込まれた。 シルフは突然のことに、パンを喉に詰まらせ戦力にならなかった。

あとで泣いて謝られたけど、シルフは悪くない。 悪いのは男たちだ。


日差しがジリジリと暑い。 汗でブラウスがびっしょり濡れている。 あれから2時間ほど気を失っていたらしい。 喉が渇いた。

馬車は街道を都市の方に向かって進んでいる。 ある意味、歩かずに済んでいるのだが、早くこの状況から抜け出さなくてはいけない。


後ろ手に縛られているので、身動きができない。 モゾモゾしていると横の男に気づかれてしまった。

乱暴に髪を掴まれ、体を引き起こされる。 痛さよりも、なんだか情けなくて涙が滲む。


もうちょっと我慢しな! 町に着いたら貴族に高く売りつけてやるからな。 そう言うと男たちは、大声で笑った。

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