第14話 ◆奴隷市場
◆奴隷市場
縛られたまま、馬車は町の中に入っていった。 荷台からは肩から上しか出ていないため、あたしが縛られていることを町の人達は気づかない。
横にいる男がナイフを手にしているため、逃げ出したり、大声で助けを求めるのは危険だと判断し、おとなしく様子をみることにした。
馬車が進むに連れ、だんだん治安が悪そうな場所になってくる。
道端で賭け事をやる男たち、昼間から酒を飲んで酔っ払う者、喧嘩をして騒ぐ者などで溢れている。
やがて馬車が止まり、あたしは男たちから乱暴に荷台から降ろされた。 後ろから蹴られて転がり落ちたといった方が正解かもしれない。
それほど扱いがひどい!
ほらっ、さっさと歩け。 後ろから男に小突かれながら、薄汚いレンガ造りの建物に入る。
建物の中は、酷い臭いがした。 普段は家畜の競りが行われているのかも知れない。
真ん中に丸い空間があり、周りに木の柵がある。 柵の外側には、人相の悪い男たちがたくさん居た。
たった今、その真ん中では一人の女の競りが行われている。 女は見窄らしい格好で、うなだれて動かない。
自分の人生に希望を失った目をしている。
次は、おまえの番だからな! さあ、こっちへ来るんだ。 男に押されながら、競りが行われる場所に引き出される。
柵の周りにいた男たちが、あたしを見てどよめく。
みんなよく見ろ! こいつは、滅多にない上玉だ。 いい値を付けてくれ!
100万ミリカ! 200万! こっちは500万だ。 競り値がどんどん上がっていく。
へぇ、あたしに家畜500頭分の値段がついたのか。 なんだか自分が売られている感じがしない。
あまりにも急な出来事なので、頭が現実を受け入れていないのかな。
1000万ミリカ出そう。 そう値を付けた男は、身なりが他の者とは明らかに違い、品の良い服を着ていた。
これは、伯爵様の・・・ 男が媚びながら近づいて行く。
他にいなければ、この方が落札だ! いいなっ! 周りを見ながら男がニヤリと笑った。
あ~あ シルフあたし売られちゃったよ・・・ これからいったいどうなるのだろう?
男達への支払が終わると、あたしは伯爵家の使用人に引き渡された。 縄はまだ解いてもらえない。
使用人は縄の端を持ち、あたしに隣を歩くように言う。 建物の裏にある馬車止めに着くとそこにはコーチ型の立派な馬車があった。
使用人と乗り込むと中でやっと縄をほどいてくれた。
馬車が動きだすと使用人が、どうして奴隷市場にいたのかを聞いてきたので、ありのままを話した。
使用人は、一通り聞くと黙ってしまった。
あたしも黙ったまま、ただ馬車の窓から流れて行く町の景色を見ていた。
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