第12話 ◆夢の中の記憶
◆夢の中の記憶
ふかふかの布団が気持ちよかったのか、なかなか終わらない夢を見た。
あたしと同じブレザーを着た女の子がたくさんいて、授業を受けている。 ここは・・学校?
夢は驚くほど鮮明で、休み時間にみんなで見ている雑誌の表紙が「JKライフ」と書いてある。
JK? そうだ、あたしは女子高生だった。 夢の中とは思えないほど、いろいろな事を思い出す。
周りにいるのは、マキとミオ、騒いでいるのはユッコだ。 チャイムが鳴ってかたずけをして下校するところで目が覚めた。
あーー 残念。 もう少し続きを見たかったなぁ。 起き上がろうと思ったが、シルフがあたしの胸の上でスヤスヤ眠っているのに気づく。
シルフは小鳥のように体が軽いので、注意していないと気づかずに落としてしまうだろう。
掌でそっと包み、布団に寝かしなおす。
外はまだ薄暗いが、サフラはもう起きてパンの仕込みをしていた。 顔と手を洗ってから、サフラを手伝う。
パン生地を捏ねて、いろいろな形のパンにしていくのだが、なかなか難しい。 最初は変な形のパンになってしまい、サフラに笑われた。
サフラは、失敗策のパンも焼いて、後でそれをあたし達に持たせてくれた。
仮に夢が本当なら、あたしは女子高生だ。 ならばなぜ、いまここにいるのだろう? いつかは、その理由が分かるのだろうか。
オーブンの前で、そんな事を考えているとサフラが優しく抱いてくれた。 涙が溢れ、わぁわぁ声を出して泣いてしまった。
サフラは、あたしが泣き止むまで優しく頭を撫でていてくれた。 なんだかお母さんのようだなと思った。
商品棚に焼きたてのパンを並べ、店の表戸を開ける。 あたりに焼きたてパンの香りが溢れていく。
もう何人かのお客さんが、並んで待っていた。 ここのパンを買って帰り、朝の食卓に並べるのだろう。
お客がいなくなったので、自分たちの朝食の準備に取り掛かる。 あたしは目玉焼きを焼いた。
サフラがお茶を淹れてくれる。 パンはまだ温かくフワフワだ。 シルフは匂いがきつい家畜の乳を飲んでいる。
普通に眠って、普通に食事ができる事が、なんてありがたいのだろうと心から思う。
食器を片づけ、サフラにお礼を言って、出発する。 サフラは子供がいないので、辛くなったらこの家に帰っておいでと言ってくれた。
あたしはまた、サフラの胸でわぁわぁ泣いてしまった。
まだ目が赤いままだけど、気を引き締めて街道の先を目指す。
この道の先は大きな都市につながっていて、その中心に立派なお城があるとサフラに聞いた。
まだ、はっきりとはしないけど、そこに行けば何かが分かる気がしている。
また、風が強く吹いて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます