第4話 ◆獣人
◆獣人
遺跡の周辺は、そこだけ時間が止まってしまったような不思議な感じがした。
遺跡は想像以上に古いものだった。
なぜなら手を触れるだけで、ポロポロと崩れるほど風化が進んでいる。
ひとたび大きな風雨が襲えば、跡形もなく崩れさってしまいそうだ。
これでは、遺跡の中に踏み入ることは到底不可能であろう。
ただ、遺跡が残っているということは、文明を持った生き物が住んでいた証であり、今もその子孫が存在するかもしれないという希望が生まれた。
遺跡には中央に塔のような建物があり、その周りに階段状のピラミッドが幾つか築かれていた。
シルフは此処に来たことはあるの?
肩に止まっていると思って話しかけたのに、シルフはいつの間にか姿を消していた。
さっき通ってきた道沿いに、花がたくさん咲いていたので、蜜でも吸いにいったのかもしれない。
ぐぅーーー
また、お腹が鳴った。
一番近いピラミッドに近づいてよく見れば、壁面には二本足で立つ動物のような彫刻がいくつもあった。
これが遺跡を建造した者達なのだろうか。 壁面の彫刻を眺めながら壁に沿って移動する。
グゥォーー
突然背後から大きな唸り声がして、驚いて身構えるといつの間にか獣人が10体ほど自分を取り囲んでるではないか。
手には、槍や剣、大きな斧を持っている。
獣人は身の丈が2m近くもあり、筋骨隆々で戦っても到底勝てる気がしない。
とりあえず、両手を上げ敵意のないことを伝えてみる。
が、手にした武器をおろす事無く、じわじわ距離を詰めてくる。
これは戦うしかないか。 仕方なくピラミッドを背にして、持っていたカッターナイフで身構える。
グワォーー
次の瞬間、一番近くにいた獣人が、大斧を振りかざし突進してきた。
さすがにこれはカッターナイフなどでは、受けきれないだろう。
もうダメかと観念したところに、妖精がすごいスピードで獣人とあたしの間に飛び込んで来た。
なんだ。 シルフそんなに速く飛べたんだ。 この状況でそんなことを思っている。
シルフが獣人達を睨みながら、下がれ! と一言発すると獣人達は酷く恐れた様子で一目散に遺跡の奥の森へ消えていった。
助かった~ シルフ、ありがとう。
感謝の言葉にはシルフは答えず、獣人達が逃げ去った森の方をしばらく見つめていた。
シルフに後で聞いた話しによると、シルフの種族は火と水の魔法を使うことができ、かつて狂暴な獣人と戦ったことがあったようだ。
そして、数は少ないがシルフの一族が圧倒的な勝利を収めたらしい。
獣人達は森の中に逃げていったが、この先は常に獣人に注意しながら進まなければならないのは厄介なことだ。
とりあえず、ここには食べ物はなさそうなので、先へと進むことにする。
陽が沈むまでに、平野までたどり着けるだろうか。
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