第3話 ◆遺跡

◆遺跡


果てしなく続くと思われた草原は、岩場から少し下ったところで、がらりと様子を変えた。


そこには川が流れていた。 川幅は狭く流れは急で、そのことから上流であることが分かる。


さっそく岩場を伝い、川に沿って下流を目指すことにした。 下流には肥よくな土地があるだろう。

そこには、かならず村か町があるに違いない。


シルフは、飛びながら後をついて来たが、疲れると肩に乗り、美しい調べの曲を耳元で歌った。


ねぇ、シルフ。 この先に誰か人が住んでいそうなところがあるか知ってる?

あたしの質問に、シルフは首をかしげて、悲しそうな顔をした。


本当に知らないのか、それともこの世界には人など居ないのか。 急に不安になる。


川沿いの道、とは言っても河原を進んでいるのだが、ところどころその河原は無くなり、その度に茂みに分け入り

拾った枯れ枝で草木を薙ぎ払いながら進む。


やがて川の両側が岩剥き出しの崖から、緑に覆われた森にかわり、鳥らしきさえずりや小動物の鳴き声も聞こえだして、

なんとか食べ物にもありつけそうだ。


それまでは、川からなるべく離れないように進んで来たが、ゴウゴウという水音に大きい滝が近いことを知る。

まずいな。 いったん川を離れて、この断崖を下るしか先に進むことができそうにない。


滝の横の崖を降りることは、苔で足を滑らせる可能性があり、自殺行為だ。

仕方なく台地を大きく回り込んで、遥か彼方の平野を目指して進むことにした。


そうこうしているうちに、青い月は地平線に沈み、代わりに赤く輝く星が昇ってきた。

赤い星は、青い星と比べると凄く小さく見える。

この赤い星の光で日中なのに夕焼けのような空色になる。


気温も気持ちだけ暖かくなったが、上着を脱ぐほどではない。


森の中を食べれるものが無いか探しながら進む。

木の実は無い。 さきほどの川にも魚らしきものはいなかった。


ぐぅーーー

食べ物のことを考えていたら、お腹が鳴った。


その音を聞いて、一瞬シルフがビクッとなる。 その様がおかしくて、またクスクス笑う。


ねぇ、シルフは普段何を食べているの?

シルフはあたしの肩に止まって、花の蜜と答えた。 やっぱり、なんか妖精っぽい。


はぁ~

シルフから期待した答えが返ってこなかったので、深いため息が出る。


バサッ

大きな枝を薙ぎ払い、一歩先に踏み入ると突然目の前がひらけて大きな遺跡が現れた。

遺跡は鬱蒼とした木々に覆われ、たいそう古い時代のものに見える。


たった一人でこのような巨大な遺跡に遭遇すると恐怖感すら湧いてくる。

あたしは、勇気を奮い起こし、ゆっくりとその遺跡に近づいていった。

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