第6話


秋は短く、北風が窓を鳴らす音が強くなる。


私と彼は1枚のブランケットに一緒に包まれながら休日の夜を古い映画を観ながら過ごす。


背中に聞こえる彼の心臓の音。

たまに私の後頭部に軽いキス。


「もうすぐ、誕生日だね」

彼の後ろから回された腕に抱きつきながらそう言うと


「あ、ホントだ」


思っていたとおり、彼が驚いた声で答える。

付き合ってからずっと、彼は自分の誕生日に無頓着だ。


私の誕生日だけは忘れることなく、毎年素敵なプレゼントを用意してくれるのに自分の誕生日はいつも当日まで忘れてる。


彼らしいな、と毎年思う。



「何が欲しい?」


買えないけどね、なんて笑って言うと彼がぎゅう・・・と私を抱き締める。


「・・・・何もいらない。お前がいればそれでいい」


甘い甘い言葉を、私の耳に何度も何度も繰り返す。


幸福の世界があるとしたら、その世界はきっと甘く蕩けるお砂糖の世界。


私は甘い世界で彼に包まれる。



「・・・・大好き・・・・」


何百回言っても、何千回言っても、何万回言ってもあなたにどうしたら届くか分からない。


どうしたら、私の愛が一欠けらも残らずあなたに伝わるのか、誰か、教えてよ。

この優しい愛しい人を、どうしたら救えるのか、誰か教えて。


世界は時と共に色を変える。


窓にうつる森の木々達は赤く色を替え、段々と葉が落ちて薄着をした木々が窓の外で揺れる。


...寂しい、季節。

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