第5話
彼が仕事に出掛けている間、私はパラパラとアルバムをめくる。
結婚式の写真。
派手な結婚式は恥ずかしいから私達は2人だけで軽井沢の小さな教会で式を挙げようと決めていた。
付き合って初めて旅行に行ったのが軽井沢だったからだ。
旅行中、2人で散歩している時に偶然見かけた結婚式。
幸せそうに微笑む花嫁さんを見て、素敵だな。いいな。と憧れた。
付き合い始めたばかりの彼に「結婚っていいね」なんて言えなくて素敵だな、ともなんだか言えなくて、私は少しいたたまれない気持ちを抱えて幸せそうな2人を見ていた。
「結婚しようか」
まるで映画に誘うかのように、サラリと彼が言った。
「・・・・・え・・・・?」
彼が少し微笑んで私を見た。
「まだ学生だからすぐには無理だけど・・・就職したら、一緒になろう」
大学3年の春のことだ。
まだまだ幼い私達の恋は始まったばかりで、春の風に吹かれて淡い輝きを放っていた。
早すぎる。
盛り上がっているからだ。
お互いの両親は心配顔でそう止めた。
でも彼はいつも少し微笑んだまま、答えた。
「僕は彼女と一緒に生きていきたいんです」
プロポーズしてくれたあの春の日の心を、彼はずっと貫き通して今に至る。
私の人生で誇れることがあるとしたらただ1つ。
彼に愛してもらったことだ。
彼を愛したことだ。
私の誇りは、彼との愛。
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