第3話
築45年の古い洋風の民家を見つけてきたのは彼だった。あれは確か、北風が凄く冷たく吹いていた冬の日。
「
金色の紙で可愛くラッピングされた小さなオブジェ。
彼からの突然のプレゼントだった。
5センチにも満たないそれは琥珀だった。
月明かりを通すと光を反射してキラキラと輝いていた。
「綺麗・・・・」
思わずそう言うと、彼が後ろからぎゅう・・・と抱き締めて笑う。
「でしょ?」
フフ、と頬を摺り合わせる。
「この家にもぴったりね」
するりと窓際に飾ったそのオブジェを撫でる。
「お爺さんが1人でヒッソリと営業してる店らしくて、このオブジェ眺めてたら、あんたに似合ってるよって言われたよ」
「...そう」
「その店から出る方向、間違っちゃって」
「えぇ?」
2人でクスクスと笑う。
私は彼にもたれて話を聞く。
彼は後ろから私の指を握り、笑いながら話を続ける。
「あ、間違えた。Uターンしないと、って思うんだけど道が狭くて」
テーブルの上に置かれたグラスに入った水が、北風に吹かれて水面が揺れるのをぼんやり眺めながら彼の指を私も握り返す。
「ずーっとずーっと一本道を運転してたら、古い家があった」
まるで御伽噺みたいだったんだ、と嬉しそうに話す彼の口調を今もはっきり覚えている。
内緒話をするように、クスクス笑って小さな声で耳に届けられていた声がシン・・・と静まりかえったのも、今もはっきり覚えている。
「・・・・・・そこに2人で住もう?」
その言葉こそが、まるで御伽噺のように甘く甘く夢のようだったと、今も思う。
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