第11話 山口はそっちなの?
「本格始動ってのはよーくわかったけどね」
本格始動が開始してから3日が経った。
呆れたような顔で山口が大きなため息をつく。
学食の長テーブルで、私達はいつものように向かい合い、私は持参したお弁当を、山口はBランチを食べている。
「バルトさんって名前がわかっただけでどうやってライブ情報をつかむ気でいるわけ?
「そう、そこなのよ!」
ついつい箸を握った状態でビシッと山口を指差してしまい、ぎろりと睨まれた。彼女はクール系の美人だから、睨むとかなりの迫力である。怖い……。
「行儀悪い。指差すのもアレだけど、せめて箸は置けや」
おまけに口調も結構きつい。
「ごめん……。でも、本当にそこなんだよ、問題はさ」
「アレは? 湖上さんのSpreadDER。あの人は結構マメにスプレってんでしょ?」
「うん。毎日何かしらね。だけど、あれから全然バルトさん出て来ないの。何かね、『オッさん』っていう老け顔眼鏡君とばっかりつるんでるみたいで」
「へぇ~。ていうか、老け顔眼鏡とか酷い言われようじゃん」
「だってさぁ、湖上さん自体がオッサン呼ばわりしてんだよ? 実際、『オッさん』ていうのもなかなか納得な感じだしね」
「オッサン呼ばわりが納得のご尊顔ってどんなもんなの? ちょっと見せてよ」
そう言って山口は身を乗り出してきた。彼女はいまどき珍しくSpreadDERのアカウントを持っていないのだ。
「良いよー。でもね、ご尊顔はこれだけ。なーんかあれから画像なしなんだよね~」
山口に見せたのは湖上さんがバルトさんとオッさんと一緒に写っているあの画像だ。そう、これ以来、湖上さんは自分以外の人物をSpreadDERにあげなくなってしまったのだ。しょーもない小物やら、その日食べたものなんかはちょいちょいあげるのに。たぶん怒られたんだろうな。
っつーか、別に私は湖上さんのファンじゃないから、そういうの望んでないんだけど!
「ふーん。こっちがその『オッさん』ねぇ。高町が言うほど老けてないと思うけど。あたしは好きだよ、こういうの」
「げぇっ、山口、アンタKATSUKI君推しの癖に!?」
「いやいや、あたし別にKATSUKI君を顔で推してるわけじゃないから。声だから」
「そりゃ知ってるけどさぁ」
だからまさかKATSUKI君推しの山口が、この老け顔眼鏡君を『有り』と言ったのが正直信じられなかった。
ま、まぁ、ライバルは少ない方が良いけどさ。
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