第7話 BULLETSブログより

 メジャー初ライブ!

 見に来てくれたみなさんっ! どぉーもっ、ありがとうっ!!!!!!


(いえいえ、どぉーういたしましてっ!)


 感謝感激のBULLETS田島ですっ!


(知ってる知ってる! よぉーく存じ上げてますとも!)


 今回はいつもサポートに入ってくれている芳一くんとKIYO-Cくんが別バンドのツアーに行っちゃって出られませんでした・・・。2人に会えるのを楽しみにしてたファンの人達、ごめんね。


(そうなんだよねぇ、確かにそれはちょっと残念ではあったんだけどさ……)


 その代わりに、記念すべきこのライブのサポートをしてくれたのは俺らの大ッ先ッ輩!


(ハイハイハイハイ! キタキタキタキタぁっ!)


 聞いてくれた人はわかったと思うんだけど、ほんっとーにうまい人たちで、俺らみたいなペーペーのサポートなんかチョーもったいねーってくらいなんだけど!


(だよねだよねだよね! うん、わかりました! わかっちゃいました! ごめんだけどっ!) 


 しかもね、見て! このカッコよさ!


(うんうんうんうんっ! 恰好良いよっ! 良すぎるよっ! あーんこの打ち上げのオフショットたまらんです~!)


 んでんでんで、あのライブの後、あの人たち誰ー?っつって、結構問い合わせあったみたいなんだよね!


(何ですとぉ? そっか、問い合わせりゃ良かったのね! あーもー、どうしてそこに気付かないかなぁ、私!)


 俺らもたぶんそーなるだろうなぁって思ってたから、ライブ前に「絶対問い合わせ来るっすよ」なーんて言ってたんだ。

 そしたらねぇ、何なのかなぁ、あの人たち、いっつもはかなりイケイケな感じなんだけど、意外と謙虚なところあって、「俺らなんてお前らのオマケなんだから、いーんだよ」って。


(――え?)


「問い合わせなんか来たって、事務所所属のサポートですーって濁しとけ。俺らは前に出んの好きじゃねーんだ」って。

 意外じゃないですか?

 いやいや、ライブ中は俺らが霞みそうになるくらいグイグイやってたじゃないすかぁ!


(じゃないよ! 思いっきり! あーもー本当にごめんだけど!)


 そんなわけで、名前はいちおー伏せときます・・・。




「――んなっ……! 何だとぉぉぉぉおおおおっ!!!! 田島ァァァァアアアア!!!!」


 思った以上の大きさでつい叫んでしまってから、私は温くなってしまった麦茶を一気に飲み干した。少しだけ頭が冷える。




 とはいっても、みなさん、そんなんじゃ納得出来ませんよねぇ。

 だから、俺からこっそりヒント!


 俺らの記念すべきメジャーデビューアルバム『ATTACK』にも参加してくださってます!

 つまり、そこに名前が書いてあるってことです!


 そんなわけで、『ATTACK』好評発売中です!

 まだ買ってなーいって人はぜひ!


 BULLETS田島でした!




「田島っち……抜け目無い……」


 空になったグラスに麦茶を注ぎ、喉を鳴らして飲む。何だかカラカラだった。


 ちゃっかり宣伝なんかしちゃって。さすが宣伝部長。

 インディーズの頃はもっと尖ってたくせに。


 ぶちぶちと文句を言いながら、グラスに少し残っていた麦茶を啜るようにして飲み干すと、私はベッドサイドのカラーボックスの1段目にキッチリと納められているBULLETSのCDの中から『ATTACK』を抜き取った。

 ジャケットの中からブックレットを取り出し、震える手でページを捲る。

 歌詞は買ったその日に何度も読んだ。もうほとんど覚えてしまっている。


 名前、名前……。


 参加しているということは、当然伴奏でだろう。だから、最後の方にあるはずだ。drums:~とか、bass:~ってな感じで。


 ――あ、あった!

 あったあった!


 あったけど……。


bass:上田コージ、湖上こがみ勇助ゆうすけ、YURI、芳一よしかずRYO-HEYリョーヘイ

drums:長田おさだ健次郎けんじろうKIYO-Cキヨシ奈良橋ならはしバルト、和田みよし、鰐淵わにぶち央介おうすけ


 ……どれ?

 ……誰?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る