(家って面白いよな。)

「何が?」

(家を一つの生き物として見るとする。)

「うん。」

(体内でびちょびちょに湿らせたものを、共生細菌が外に持ち出して乾かして、また体の中に取り込んで。せっかく乾かしたのにまたびちょびちょにするんだぞ。)

「洗濯だね。」

(体内に潜む共生細菌を洗浄したり、食べ物を供給したり。)

「お風呂と冷蔵庫かな。」

(暑い日には体温を下げて、寒くなったら体温を上げる。人間のような恒常性を持っているし。)

「冷暖房。」

(せっかく親切にしてやった共生細菌が出て行って、代わりに外部から別の共生生物が寄生して。)

「引越しだ。」

(屋根を帽子と見たり、窓は毛穴みたいなものと考えれば、創作意欲が湧いてこないか?)

「別に。」

(恥ずかしがるなよ。物を生き物に見立てて話を考えるのは悪いことじゃないぞ。)

「いや恥ずかしがってはないけど。」

(例えばこういうのはどうだ。木造建築の木造君とレンガ造りのレンガちゃんがいつも隣り合って仲良く暮らしていました。)

「なんか始まったよ。」

(木造君はレンガちゃんのことが大好きで、レンガちゃんも木造君が大好き。)

「両思いですな。」

(互いの体の中に住む細菌君たちも仲良しこよしで、幸せな日常を送っていました。)

「あっ、そろそろ問題が起こるパターンだこれ。」

(しかし、幸せは長く続きませんでした。)

「ですよねー。」

(ある日、レンガちゃんの中から細菌君たちがいなくなってしまいました。寂しそうなレンガちゃんを励ましていた木造君でしたが、その数日後に衝撃の事件が起こったのです。)

「不幸が不幸を呼んでいく~。」

(どこからともなくやってきた四輪の怪物が何匹もレンガちゃんを囲い、その体を弄び始めたのです。)

「言い方。解体工事ね。」

(異変に気付いた木造君でしたが、惨劇を前にして彼は動くことができませんでした。)

「家だもん。」

(やがて、肉体をばらばらに分解されたレンガちゃんは、陵辱の限りを尽くした化け物たちに攫われてしまいました。)

「攫われたというか、もう人生終わってない?」

(僕は無力だ!木造君の足元は、愛するものを守れなかった悔しさで湿っていました。)

「住人が庭の草花や畑の野菜に水遣りしたんでしょ。」

(毎日のように延々と泣き続ける木造君を見ていた神様は、彼を不憫に思いました。)

「日課って大事だよね。」

(神様は不思議な力で、木造君を巨大ロボットへと変化させました。)

「え?」

(さあ、ワシと共に暗黒冥帝コノヤロ王を倒すのじゃ!神様が巨大機樹モクゾーンに乗り込むと、彼も呼応するように瞳を黄色く光らせ、天空に聳える魔神要塞へと)

「待て!色々おかしい。何で木造君をモクゾーンにしたの?レンガちゃんはどうしたの?」

(ごめんなさい、木造君。実は私、暗黒冥府四天王の一人なの。貴方とはどうあっても相容れない…)

「超展開!いやレンガちゃん死んだんじゃないの?彼女もまた宿命を背負った悲しき巨大兵器であった…って無茶苦茶にも程があるわ。」

(じゃあどうしたいんだよ?神様とモクゾーンの甘くて酸っぱい青春ラブコメが見たいのか?)

「爺さん神様と木造巨大ロボ♂のどこに青春要素があるんだか…。そもそも需要がないだろ。」

(ないな!)

「なら言うな。」

(でもこれで分かっただろ?)

「何が?」

(家って面白いってこと。)

「いい加減にしろ。」

(どうもありがとうございました。)


(何これ?)

「こっちが聞きたいわ。」


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