匙加減

(人間には二通りの成長タイプがある。)

「何?」

(叱りつけて圧力をかけて追い込まれて成長するタイプと、褒めて褒めて褒めちぎって鼓舞することで成長するタイプ。)

「他にも種類はあると思うけどね。それで?」

(前者を圧力タイプ、後者を溺愛タイプと呼ぶとしよう。双方の利点と欠点は何だ?)

「うーん、圧力タイプは集中力や緊張感を維持して事に当たるから技術が洗練化されていって効率が良くなるとかが利点かな。欠点としては、匙加減を間違えれば緊張で頭が真っ白になって普段通りのことができず、精神的に追い詰められてモチベーションが低下して作業に手をつけられなくなってしまうことかな。ストレスへの耐性にも依るだろうけど。」

(じゃあ溺愛タイプは?)

「利点としてはモチベーションを維持しやすくて、緊張感がないので普段通りもしくはそれ以上の能力を安定的に引き出せることかな。欠点としては、甘やかし過ぎれば天狗になって傲慢になって制御が利かなくなる。また叱られることがほとんどないからミスに気付き難く技術向上の面では不安定になりそう。この辺りかな。」

(どちらも成長の如何は匙加減と使いようってことだな。)

「飴と鞭を使う側だけでなく、使われる側にも意識は大事だけどね。頑張る姿は周囲の声援を生み、苦難を超えて達成することで得られる喜びや感動は大きい。真面目に取り組むことで、達成感による感動だけでなく、叱咤激励してくれた指導者への感謝と尊敬の念が生まれて絆が深まる。」

(全く泳げなかった子供が教師に支えられて練習に励み、25mを泳ぎきるまでに至った時みたいなものだな。)

「例えが限定的だけどな。話を戻すと、叱咤は助言。激励は鼓舞。言われたことに対して反感を覚えて突っぱねる前に、騙されたと思ってそれをもとに達成を目指してみるといい。褒められて天狗にならず、評価してくれた指導者の存在があったから自分の力に確信が持てたのだと驕らずにいることが大事。」

(指導者も反発する人間の成功に対して、それみたことかという態度を取らずに、成果を認めてやる優しさが必要だよな。後は指導対象の性質を見極めての適度な飴と鞭の運用。)

「とどのつまりは、叱るにしても褒めるにしても匙加減は必要ってことだね。」

(自分で何言っているか分からなくなって強引に纏め上げてきたな。)

「それはお前も同じでしょ。それで、この話をした理由って何?」

(なんとなく。)

「は?」

(いや、テレビの特番とかネットニュースとかで度々取り上げられて熱い議論が起こるじゃん。俺もそれっぽいこと言ってドヤ顔したいなって。)

「ならそういう場所に凸したら?」

(ほら、俺ってメンタル弱いから。)

「頭も、でしょ。」

(それは言うなよ…。)

「言わなきゃ分からないでしょ。」

(お前もな。)


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