『うんりょーのコイビト♡』より
うんりょーの夏休み ー知華と鷹能先輩ー
【situation】
7月下旬、コンクール県大会直前。
*****
「ほい。じゃあ今日の合奏練習はこれでおしまい! おつかれさーん!」
「「「ありがとうございましたー」」」
「うえー。今日も暑かったなぁ。ボロい木造じゃあエアコン効いてる感じがしないよなぁ」
「あ、うっちー。コンガ片づけるの手伝ってー」
「あ、はいはい」
「知華ちゃーん! 今日もタカちゃんはうんりょーに来るの?」
「あ、トミー先輩。おつかれさまです。今日は先輩は大学の特別講義に出るって言ってたから……」
「それはさっき終わって駆けつけてきた」
「
「あっ! タカちゃん! 待ってたよー♡」
「トミーが待っていたのは俺ではなくて差し入れのアイスだろう」
「そうそう!……って、そんなわけないじゃんっ! 慣れない都会での一人暮らしで、夏休みにタカちゃんやみんなに会えるの楽しみにしてたんだからさ!
おーい!みんなー!OBのタカちゃんがアイス持ってきてくれたよー!」
「「「
(なんだよ、差し入れを口実に知華ちゃんに会いに来てるだけじゃねーの?)
「何か言ったか?内山田」
「いいえー。別にー」
「ちなみに知華は今紫藤家で同居しているのでな。俺がうんりょーに来なくたって毎日会っているぞ?」
「聞こえてたんじゃないですか! それに、そんな自慢たらしい言い方しないでくださいよ」
「ほらー。先輩も、うっちーも、アイス溶けちゃいますよー」
「はいはい。今行きまーす」
「鷹能先輩はいつものあずきバーでよかったですか?」
「ああ、取ってきてくれたのか。ありがとう。知華はちゃんとプレミアムチョコサンデースペシャルカップをゲットできたのか?」
「はい。てゆーか、こんな一つだけ明らかに単価が違うアイス、誰も遠慮して取りませんよ。しかもご丁寧に36ミリ幅のテプラで “知華用” って貼ってあるし……」
「そこはやはり俺のことを知らない一年生にも、ちゃんと示しておかないといけないと思ってな。紫藤家嫡男の婚約者に手を出す不届き者がいないとも限らない」
「一学期の間、毎朝黒塗りの外車で武本さんに送られて学校に来てましたからね。不本意ながら私もすっかり有名人ですよ」
「ははは。悪い虫がつかないのはいいことだ。……武本と言えば、今日は海斗と志桜里は二人で海に出かけているようだぞ」
「そうなんですか!? よかったぁ。あの二人、順調に愛を育んでいるんですね!」
「ああ。志桜里が最近外向的になってきた分、海斗は他の男が寄りつかないようにハラハラしっぱなしだと愚痴っていたが」
「ふふっ。幼馴染み二人そろってやきもちやきなんですね!」
「……」
「あっ! ちょ……」
「口元にチョコレートがついていた」
「だっ、だからって、な、舐めて取らなくても……」
「そっちにもついているぞ」
「わっ、ちょ、ほんと、やめ……! ご、ごめんなさいっ!やきもちやきだなんて笑ってすみませんでしたっ」
「ちょっとー。タカちゃん達、いくらその場所が死角だからってイチャつくのやめてくれるー?」
「あ、トミー。伝え忘れていたが、今日同じ講義を取っていた
「えっ!? タカちゃん、それ早く言ってよ! 咲綾のアイス確保しとかないと俺が怒られるだろー!?」
「ふふっ。トミー先輩たちも相変わらずみたいですねっ」
「……俺としては、あそこで並んでアイスを食べている内山田と
ところで知華。俺はまだやきもちやき呼ばわりされたことを許したわけではないぞ?」
「えっ?」
「「……」」
「「……」」
「「……」」
「……ぷはっ! せっ、せんぱいっ!こーゆうのは家に帰ってから……っ」
「もちろん、家に帰ったらこの十倍のお返しが待っているから覚悟しておくように」
「ええっ!?……もー、どんだけ意地悪なんですかぁ」
「俺は意地が悪いか? 知華のことは最大限大切にしているつもりだが、まだ足りないか?」
「えっ、ちょ、だからぁっ……! し、幸せですっ! 大切にしてもらってますっ!
だから、もう――」
「「……」」
―おしまい―
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