第7話部屋

私って結局は偽善者だったのかな。さくらはひとり部屋でうずくまる。桃子ちゃんも何もあんな言い方しなくても良かったのに。でも何より腹がたつのは何も言い返せなかった自分に対してだった。竹中さんはベタベタ触ってきたり、桃子ちゃんを無視したりするし、正直助けなきゃよかったと思ってしまう自分もいたのだ。

そして桃子ちゃんがいつもそれに対して何も言わなくても不快に思っていることくらいわかっていた。けれど私は何もしなかった。だってここで竹中さんに何か言ったらわたしが悪者のようになってしまう。いい人ではなくなってしまうのだ。だからそれが怖かった。いや、そんなのただの後付けで本当は勇気がなかっただけかもしれない。でも、だからといっていつまでも学校を休んでいるわけにもいかない。

けれど、クラスでわたしは桃子ちゃんと竹中さんのどちらと一緒にいればいいのだろうか。

一人は嫌だった。一年ほど前、わたしは人に話しかける勇気が出なくてずっとひとりでいた。お弁当も移動教室もずっと一人。みんなが楽しそうに笑っているのに聞き耳を立ててたまに面白いことを言ったりするからクスリと笑うけど、結局そのグループには入れない。勇気がない。そういう時、自分が一番惨めだ。小学校のときはたくさん友達がいたのになんで、と気を抜くと泣いてしまいそうになるのだ。ひとりがいい、なんていう人もいるけれど、わたしは寂しい。ひとりぼっちは心細くて、そして悲しい。だからもうあの日々には戻りたくない。

けど学校には行かなくてはならない。もう一週間も休んだんだから。うじうじ悩んでも仕方ない。学校は監獄のようなところだとつくづく思う。結局その檻の中にいる間は逃れられないのだ。月曜日からは学校に行こう。そして精いっぱい生きよう。たとえクラスでひとりぼっちになったとしても。

よし!頑張ろう!と思ってさくらは学校の支度を始めた。

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