第6話先生
掃除当番になってしまった。
しかも週番なので残って日誌を書かなくてはならない。
同じ当番の子がお先に、と言って帰っていく。教室にひとりぽつんと残ってしまった。教卓から日誌を出そうと中に手を突っ込むとなにかゴロンとしたものが手に当たった。なんだろうと思って見てみると人形だった。
私は凍りついた。なぜならそれは山下先生に酷似していたからだ。嫌がらせにしても悪質すぎる。山下先生も恐怖の顔を貼り付けて人形になっている。
でもあまりにもリアルである。
これからとった行動は自分でもよくわからない。私はその人形をとっさにカバンの中にしまい、教室から出た。
誰に相談すればいいだろう。私には親しい友達なんて一人を除いていない。しかもその一人は不登校だ。竹中は必死で考えた。あの後すぐに面談室を飛び出し走ってきたのだ。
でも何か引っかかることがある。そこで竹中は閃いた。くるみちゃんは『大事な女の子たち』と言わなかったか?
それなら自分一人でなくもうひとりいるはずだ。でも誰だ?
そもそもあの人形はリサイクルショップで売られていたものだ。だからもうひとり自分と同じような女の子がいても不思議ではない。でも先生としてこの学校にやってきたのだから学校内にいるのだろうか。人がひとり死んでいるのだからこの問題をひとりで背負うにはやはり荷が重すぎる。誰かに…誰かに言わなくては…考えていたら向こうから走ってきた誰かにぶつかった。
動揺するあまり竹中さんに思いっきりぶつかった。げっ、よりによってこいつかよ。しかし私はそこで重大なミスを犯した。カバンのチャックがちゃんとしまってなかったのだ。筆箱やらメガネケースやらが床に散らばった。山下先生の人形もだ。
それを見た瞬間竹中さんの顔が強張るのが見えた。私も固まってしまった。
「ちょっと来て。話したいことが。」
そう言って竹中さんは私を近くの公園まで連れて行った。ここなら誰にも話を聞かれる心配はない。
竹中さんが口を開いた。「その人形どこで?」
「教卓の中に入ってて反射的に持って来ちゃって」と私が答える。
そうか、と言って竹中さんは今までの経緯を話した。私は驚いた。
なぜなら私もその人形に覚えがあるからだ。
「私昔遊んでいた人形をリサイクルショップで売ったことがある。その子はリナちゃんっていって…胡桃先生と似てた…」
今度は竹中さんが驚く番だった。
「だって…それってあの胡桃先生の名前リナっていうんだよ?確実じゃん。」
なんで今まで気づかなかったんだろう。これからどうすればいいのだろうか。二人は途方に暮れてしまった。
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