第23話 眠るまで
「おやすみ綾音さん。大好きだよ」
僕はそうラインを入れるとしばし考え込む。
僕はラインに愛していると打ち込みたい。だけど心臓が高鳴り、緊張してお茶をにごしてしまう。
この言葉を一番伝えたいになと思う。
睡眠薬を飲み、CDラジカセのスリープモードにして音楽をかけて布団に入った。
睡眠薬と音楽の力を借りないと眠れない。
統合失調症は不眠を伴う事が多い。
不眠が続くと壊れていく。
僕はそれが嫌だった。
音楽は気分を紛らわせるためだ。
睡眠薬が強制的に働き僕を眠らせるまでの時間、僕は神と名乗る幻聴と悪魔を名乗る新しくできた幻聴に罵詈雑言を浴びせられ続ける。それに被害妄想で外で会話する足音やクルマの止まる音が僕を攻撃している様に感じる。
眠るまでだいたい40分。
恐怖の時間帯だ。
悪魔「やっとお話ができますねぇ。順平君」
外で来るのドアが閉まる音がする。
神「来ましたよ。私の手先が。もちろんあなたを殺すためです。あなたの様な社会に何も貢献できずにただ社会に迷惑をかけて、死んでいくのをゆるせません。死になさい。死ぬことでしか価値を生み出せないのですよ」
僕は生きたい。
悪魔「自分一人で生きられないのに高望みですね。どれだけの人に迷惑をかけるつもりですか。死になさい。それでしか世の中に貢献できないのです」
狂いそうだ。
狂えば楽になるのだろうか?
完全に心が壊れれば楽になるのか?
悪魔「良い考えですね。さっさと自殺しなさい」
僕の生きる価値。
それは僕に生きて欲しいと願ってくれる人々がいる事だ。
その人達の期待を裏切れない。
神「自殺をすれば神の無限の愛で救ってあげますよ」
数少ない友人たち。
ラインを続けてくれる恋人。
回復を祈ってくれる家族。
SNS仲間。
そんな人たちの期待を裏切り、その上悲しませる事なんて僕にはできない。
僕の存在そのものが罪かもしれないけど、期待している人たちを裏切り悲しませる事が罪だと思う。
だからもう僕は誰も悲しませたりはしない。
強く生きたい。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます