第16話 空虚な戦い

僕は朝ドラを観ている。リラックスできるはずの時間帯なのに幻聴はあいも変わらず遅いかかってくる。会話したらだめだと思いながらも脳内では反論してる。


幻聴「何をしているんだ。働く事もできない無能者。生きている罪を自殺して償え」


自殺。統合失調症の幻聴で自殺する人もいる。それほど怖い事だ。だけど僕は大丈夫。幻聴を自覚しているから。でも幻聴に伴う被害妄想が怖い。


幻聴「納税の義務を果たしてください。犯罪者!」


朝ドラのヒロインが頭を下げている。


「自殺するのが怖いんだろう?首吊り士に頼めよ。本当は死にたくないくせに!そんな奴が一番有害なんだよ!」


なぜ自分にここまで責めさいなまられないといけないのだろう。悔しいし腹が立つ。事実を指摘されているからだ。それに言い返せない不甲斐なさを感じる。

証明するには病気を治して社会復帰をする事だ。それに僕には生きている意味はないかもしれないけど、生きていく義務と責任があるはずだ。大切だと思ってくれる彼女と支えてくれる家族がいる。僕は死ねない。僕は死んでもいいかもしれない。だけど死んだ事で周りの人々が必ず後悔する。その事は僕は許せない。

だから、それが、僕の生きていく理由だ。


幻聴「屁理屈を並び立てて。死ぬのが怖いだけだろう?早く死んでしまえ!このクズ野郎!」


もう僕には生きる理由ができた。死にはしない。幻聴には負けない。

                                 続く  

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