第15話 空白の恐怖

僕はレコーダーで録画しておいた朝ドラを立ち上げる。

彼女に再生したよと伝える。

彼女からも再生したよと言うラインが同時に入る。

リラックスできる楽しい時間だけどただテレビを観ると言う、何も作業が無い時間は幻聴による恐怖を味わう時間帯だ。トイレやお風呂は気分転換になるのか幻聴や監視されている感じはしない。でもテレビを観る時間帯は恐怖を感じる。

耳元でささやくような声が聞こえる。


幻聴「役立たず」


ただささやかれただけだけど深く心の古傷をえぐる。

僕はまだ過去から逃げ出せていないのか?

後何度このトラウマを乗り越えれたら僕は立ち直れるのだろう。

だめだ。テレビに集中しないと。


幻聴「昼間から朝ドラを観て、良い身分だな。本当に死んでほしい」


ピコン

ラインの通知音が鳴る。


「大丈夫?しんどそうだけど?」


僕はすぐに打ち返した。


「今は幻聴の大合唱で耳元からささやかれたり、脳内で大声を出されたり、耳元から怒鳴られたりしてちょっと困っているよ。迷惑をかけてごめんね」


「大丈夫。その感覚分かるよ。ドラマで気晴らししてね」


「ありがとう。ドラマに集中するね」


こうして僕の昼間の時間帯は過ぎていく。幻聴さえ聞こえなければきっと、いや綾音さんと言う素敵な彼女がいるだけで幸せなのだろう。

か弱い、何も力の無い僕だけど、いや僕だからこそこの幸せを守るためにも幻聴と闘おう。

                                   続く 

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