第11話 優しい鳥かご

自身の脳に鳴り響く幻聴との会話を続けながら、僕はスマホを手に取り、ラインのアプリケーションを立ち上げる。こんなつまらない僕とラインをしてくれる恋人がいる。

彼女も同じ統合失調症だ。

「ラインの返答が遅いけど、どうしたのかな?幻聴が酷いのかな?」

幻聴「幻聴じゃねーよ。神の声だよ」

うるさい。脳内で反応する。

僕はラインを打ち始めた。

一日の生活の大半をラインに費やす。

お互いを励まし、応援しあうためだ。

「幻聴と闘っていた。やっつけたよ」

「幻聴は無視しないとだめだよ」

「アドバイスありがとう。頑張るよ」

「幻聴は辛いよね」

「うん。怖いよね。脅しかけてくる表現が多いからね」

「うん。分かるよ。私もそうだった」

このやり取りに何の意味もないかもしれない。

依存しあい束縛をしあっているのだ。

それでもいいと思っている。

鳥かごを作ったのは僕だ。

捕まったの誰。

僕それとも彼女?

二人とも鳥かごの中で鳴いているかもしれない。

このラインのやり取りは、甘くて優しい愛の鳥かご。

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