S・EXEP「舞の妖しい昂ぶり」
第201話
私は……神……。
それとも、罪を犯した悪い女か……。
それは、あっけなくいとも簡単に彼女の中に侵入し、彼女を絶望へと誘った……。
なんという清々しい行為……。
柔らかい刺し心地……。
彼女の躰から流れ出る温かく、眩しいくらいに赤い液体……。
その感触が、私の爪から指へといくばくかの粘りを帯びて伝わる……。
「甘い……」
「苦い……」
それとも……別の味覚が存在するのか……。
興味をそそる……。
「ま……舞……」
か細い夢子ちゃんの意思……。
ふふふっ……。
恨めしい夢子ちゃんの目……口……躰……。
どうしてそんな表情を私に見せるの……私は夢子ちゃんに今、愛を与えているのよ……。
夢子ちゃんはこれから死に……そして、産まれ変わる。
最新型の愛人形として「彼女達」と共に私達がいなくなったこの世界を生きてゆく……。
神が「いない」新たな世界で……。
「いいえ……」
今のこの世界にも、神なんていなかった……。
それは、愚かな人間が創り出したただの「妄想」……。
神が存在したなんて、誰も証明できない。
神が存在したという「昔話」を盲目的に信じ込み、崇め続けてきた。
なんて……滑稽な……。
笑ってしまうわよね……夢子ちゃん。
いない神に何を祈り、願っても、叶う事なんてない……。
それが一番都合が良かったのよ……夢子ちゃん……「そうしていれば」自分は良い事をしている、良い生き方を歩んでいる……そう教育され、すりこまれ、洗脳され、人間は「神」に対して僅かな疑問も持たず、ただ従順に生きて、思考を停止させてきた……。
「あぁ……」
またそんな恨めしい眼で私を……。
可愛いわ……夢子ちゃん……。
私の腕をそんなに強く握りしめて……まだ、生きようとしているのね……それとも、全ての神に祈っているのかしら……「助けてください」って……。
何度も言うわ夢子ちゃん……神様なんていない。
いてはいけないのよ……。
神が、何かをしてくれた……?
いいえ……何もしてはくれなかった。
だって……いないんだから……そうでしょう夢子ちゃん……事実、私に殺されている夢子ちゃんに神は何もしてくれていないじゃない。
もし、神が私のこの行いを観ていたら、止めてごらんなさい……そして夢子ちゃんを助け、何事もなかったかのように止血し、痛みから解放して、夢子ちゃんを「蘇らせて」みればいい。
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