第200話

 梨寿華ちゃん……あなたは可憐で素直で、無垢で、その存在はまさに太陽で輝いていた……でもきっとあなたは意識もしていなかったでしょうね……梨寿華ちゃんの周りにはいつもたくさんの人が集まり、笑っていたわね……。


 でもね、光り輝く世界には必ず影がある……。


 わたしや舞は影……光り輝く事さえできなかった、あのヒエラルキーの中で最下層の存在……。


 別に梨寿華ちゃんを責めているんじゃない……。


 わたしも、そして舞も最下層で梨寿華ちゃんを妬んでなどなかった……いいえ、ふたりにとって最下層が心地良い場所だった……。


 あの時は、そう思っていた……。


 でも……今湧き上がってくる負の感情はなんだろうか……。


 羨ましくて……


 妬ましくて……


 好きで……


 好きじゃなかった……。




 そう……好きじゃなかった……。


 所詮、影は影……太陽にはなれない……。




 だから目覚めてすぐ、この世界の太陽を真っ先に感じたいと思ったんでしょう。


 決して外に出てはいけないのに……情報通りだわ。


 そして……わたしに狙われている……。






 だから……


 口元が緩む……。




「おっと、次弾チャージ完了っと」


「もう、遠慮なしのマキシマムパワーでいいよね、夢ッチ……」


 アリスが、わたしのレーザーライフルの出力を開放し「温情」を断ち切る……。


 心地良い風が吹く。


 万希子は、しなやかに佇み、長い髪を風の流れに乗せ、ゴールドマリーが隣で腕を組み、梨寿華を見据えている……。


 スコープの中の可愛い梨寿華。




「さぁ夢ッチ……さっさと梨寿華ちゃんブッ殺しちゃおうよ……!」


 足をバタつかせ、はしゃぎ言うアリス……。




「そうね……」




「梨寿華ちゃん……いいえ」


「梨寿華……」






「死んで……」


 トリガーに触れた指が躊躇なく、淀みなく動き、わたしの嫉妬と羨望の意思を遂行した……。




 …………つづく


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