第199話

 わたし達が勝手にわたし達を葬った事など、この惑星と動植物達は気にも留めていないだろう……。


 スズメやシジュウカラ達が「そうよ」とわたしの思いに応え、美しい歌声を奏で、可憐な草花らも、仄かに流れる風に身を任せ、踊る……。






 伏せ狙い「感触」があった筈の第1射をかわした人物が、辺りを見回す……。


 レーザースコープのレンズの中で戸惑う姿……。







梨寿華りすかちゃん……」


 懐かしさに、言葉が漏れた……。




「あぁあ、外しちゃったぁ……夢ッチは相変わらず射撃がへたっぴだなぁ……」


 頬を両拳にちょこんと乗せ、わたしの隣で伏せていたアリスが自身のビームライフルで「遠く」にいる梨寿華ちゃんを捕らえ、言う。


「くっ……」


 懐かしさと同居する悔しさが放出される。


「まったくぅ、あれだけ訓練したのに外しやがって……テメェは何をやってるんですか」


 相変わらずのゴールドマリーの口調に、悔しさがより心にのしかかる……。


「ふたりとも……そんなに夢子さんを責めないで……」


 背後で、しっとりと言う「万希子」……。




「照準が少し甘いわね……」


 万希子の優しさに便乗し、自分の不出来さを回避する。




「ふ〜〜ん……」


 懐疑心なアリスの目が、わたしを見つめる。


「んま、確かにミネルヴァッチのやっつけ仕事感は否めないかなぁ、これ重いし……レーザーチャージも遅いしね……」


「そうね……」


「それとさ、このバトルスーツ、なんかピチピチできつくない……ってか妙にエロいんだよっ……こんなにハイレグカットにしなくてもいいよねぇ……ヴィーラヴやってた頃も、ここまで過激な衣装はなかったよ……」


 アリスが不満を言い、胸、腰、臀部に触れる。


 タイトなスーツの「現実」に少しわたしは身を捩らせる……。


「あのエロ量子コンピューター、あとでお仕置きをお見舞いしてやりましょう」


「ふふっ、そうしましょうか……」


 ゴールドマリーの提案に万希子が吹き出し、応える……。




「んじゃ、第2射行ってみよっか、夢ッチ」


 感情を抑制したアリスの声……。


 再びスコープを覗く。


 状況の把握に必死に努めている梨寿華ちゃん……。


 時折わたしと「目が」合うも、2キロ程離れた場所で「狙う」わたし達に気づく筈もない……。




「可愛いわ、梨寿華ちゃん……あの頃と何ひとつ変わらない……第1射をかわしたのも、持って生まれた勘の鋭さと運動神経の良さなのね……」


「だから……」




「好きじゃない……」


 魂が紡ぐ。

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