第202話
でも……そんな事はできない……。
できる訳がないの……夢子ちゃん……。
寧ろ……存在してもらっては困るのよ……。
いたらいたで世界は混乱、困惑するでしょうね……。
それは「支配」されると同義だから。
もしあらゆる神が空から降りて、争い、憎しみ合いを直ちにやめなさい……そんな事を言ったら、私達は素直に従うのかしら……。
「どう思う……夢子ちゃん……」
あぁ夢子ちゃん……何も答えてはくれないのね……肌が青白く、唇もこんなに紫色に変わってしまって……冷たく、固まって……。
「従う訳、ないじゃない……夢子ちゃん……」
本物の全ての宗教の「神」なんかが姿を現したら困るじゃない……。
彼らを崇める代弁者達が……。
崇める……?
違うわね……「神」を利用している権力者とでも言い換えた方がいいかしら。
もう、わかるわよね……夢子ちゃん……。
本当の神の前で彼らはひれ伏すしかない。
今まで、神や仏の名代のふりをして私達に教えを説いていた者達はもう、必要なくなるのだから。
それは彼らにとって「権力」を奪われるのと同じ……もう高いところから世界を観られなくなる……。
平民になり下がり、現れた神に従うしかない。
でも……それはできないの……。
かといって、本物の神に抗う事なんて不可能……だってそれは即ち神の否定……。
全ての神々が降臨し、この世界のあらゆる不実や不幸を取り除いたら「権力者」達にとってはこの上ない不都合……。
「彼らはまがい者だっ」って焦り、否定するでしょうね。
なんて滑稽なの……夢子ちゃん……。
信じている事を、信じない……。
本当の神々が現れたら、彼らは「失業者」となり、平民となり下がる。
だって、全ての事を神々が決めればいいのだから、彼らなんてもう必要ない……。
「夢子ちゃん……聞いてる……?」
可愛いわ……夢子ちゃん……もうこんなに血が溢れ出して……もっと抱きしめてあげる。
そう……全ての人生は「滑稽」な二流芝居なのよ夢子ちゃん……。
だから……終わるの……この世界は……。
だから……終わった後の世界は、私の愛人形達と夢子ちゃんに託すわね……。
「私……」私はいいの……この狂った世界で私の人生は終わり……。
十分私は私の人生を生きたわ……短い長いの時間軸じゃないの……私の最期は濃密だった……泥水の世界から救われ、彼女達に出逢い、語らい、愛し合った……。
楽しかった……初めて生きている実感があったわ……。
だから、この先は夢子ちゃん……お願いね。
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