第194話

 2日目、3日目……わたしは貪る様にヴィーラヴに、舞に迫った……。


 わたしの「必死」な姿に彼女達は決して口外する事のない秘密をいくつかわたしに明かした……。


「いやぁ、若気の至りってやつですなぁ……」


 万引き常習から立ち直ったアリス……。


「実は私達……つき合っているんです……」


 流花と葵の同性愛……。


「上手くいかなくて……辞めようと……」


 万希子さんの苦悩……。


 日を重ねるごとに信頼を獲得したわたしに、彼女達は自らの過去を告白する……。


 さすがに、アリスの件は舞とアリスしかいなかった時に聞き、他のメンバーも知らない事だったが、流花と葵、万希子さんの事はメンバー間でも共有されている。


「他のメンバーには内緒だよ……」


 人差し指を唇にあてがい、悪戯っぽく念を押すアリス……舞は横ではにかむ……。


 はにかみついでに、アリスの今の母親が、井上・ペターゼン・礼子だという事実もこの時聞いた……。


「そんな大事な事、わたしに話してもいいの……」


 舞に問う。


「夢子ちゃんはもう、私達の一員なの……だから、いいのよ……」


 わたしは誰にも口外しない……そう自信に満ち溢れた舞の瞳……。


 確かにアリスの件も、他の事も口外する気はさらさらない……ましてこれらの件が公になっていない事実が、舞とヴィーラヴの結束を示している。


 アリスの事は、どう「隠蔽」したかは、それとなく想像はつく……。


「あの時は、大変だったわよアリス……」


「えへへ……」


 ふたりのやり取りが、想像を確信に変える……。


 流花と葵は、男なんかでは得る事のない「悦び」を私達と一緒に共有しない……と、わたしを妖しく誘い、言っていた。


 万希子さんも躰を捩らせ、頬を薄紅色に染め、自身の脱退騒動を語った……。




「記事にする……?」


 さっきはあんな瞳で言っていた舞が「冗談まじり」にわたしに聞いた。


「いいえ……」


 舞の「罠」をかわす様に瞬時に断った。


 秘密の共有……。


 わたしの魂に棲みつく「いやらしい」概念が導いた結論……。


 舞も「それを」読み解き、淑やかな笑みを見せた。




 独占密着取材も折り返しになる頃には、わたしも舞と彼女達と完全に一体化した様な感覚になり、取材も円滑に進む……。


 ある程度までは、彼女達にプライベート動画の撮影を任せ、その結果「やりたい放題」の有料動画の課金者は増え続け、わたしの出版社も少しは肥え太るのだろう……。


 無論、秘密の部分は決して明かす事はない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る