第189話
姉の生き写し……万希子さんの妹である万希亜さんは、これ以上、表現のしようがない……。
万希子さん、万希亜さんとは違う淑やかさを纏う「無色透明」なスミレさん……。
最年少ながら長身、腰まで達する煌めく金髪ストレートヘアをなびかせる、ドイツ系アメリカ人のゴールドマリーさん……。
出来レース……万希亜さんの加入に当時「ささやかな」批判があった……が、当然の様にそれらの声はかき消され、消えていった。
わたしだって、疑問に思った事もあったが、この業界いや、この世界は何があってもおかしくはない。
ならば、例えば他のアイドルオーディションが全て「清廉潔白」に行われているのかと問われれば、胸を張って「はい」と言えるものは果たしていくつあるだろうか……。
実際、万希亜さんのパフォーマンス、キャラクターは万希子さんさえ凌ぐものと業界、世間ではそう認知されている……。
「おおーっ、てめぇがマイマイのフレンドの夢子ですかぁ……」
片言日本語と時々暴言、更におぼつかないアクセントのゴールドマリーさんがわたしに迫る。
「マリー、てめぇとか失礼だよ……今は造ったキャラでなくていいから……」
教育係のひとりだったアリスが諭す。
「あら、これは失礼致しました夢子さん……以後、お見知り置きを……」
うって変わって、金髪を揺らがせ、貴族令嬢がする様な礼を流暢な日本語と共に披露するゴールドマリーさん……。
「いや、それもキャラだから……」
「おっと、ソーリィですね夢子さん、アリス……それにしても日本語はディフィカルトですねぇ」
これが本当のキャラクターなのか、碧い瞳、幼いながらも肉づきのいい躰を最大限に活用し、ゴールドマリーさんはアリスとわたしに言い、詫びる。
それに比べ、スミレさんは「俯瞰的」に状況を観察し、まだわたしを値踏みしている。
万希亜さんは、万希子さんの隣に立ち、背丈の差以外にもう見分けがほぼつかない……モカやモコの様に双子でもないのに、万希子さんから「創られた」かの様に佇み、わたしを柔らかく見る……。
「呼び方は、夢ッチでいいよね……」
アリスが「勝手」にわたしの呼び方を決めると、残りのメンバーもにこりと頷く。
「呼び方が決まった様ね……」
この空間に存在する誰でもない音質の声が、メンバーの後ろから発せられた……。
「マイマイ……!」
アリスの声が弾む。
それを合図にメンバーが6人づつ、まるでステージパフォーマンスの如く左右に分かれ、真ん中の「花道」から女が歩き、近づく……。
「舞……」
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