第136話
私と愛人形……数人のスタッフとテレビ局の人間、そしてシフォンとマネージャーが「広くなった」スタジオに残された……シフォン側のスタッフは、もう誰ひとりいない……。
「ラヴラヴ、ラヴラヴ……」
再び標的をヴィーラヴに定め、シフォンは愛人形を馬鹿にした声色で連呼、挑発する……。
「シフォンさんっ、やめて下さい……!」
マネージャーの語気が強まる……。
シフォンの「愚行」を無視するかの様に、詩織はすくっと立ち上がり、スタッフ達に目配せする……詩織の意を汲み取ったスタッフ達は、シフォンのマネージャーにそれぞれが一礼し、荷物を抱えてスタジオを出てゆく……。
詩織が「うん、うん」とスタッフ達ひとりひとりと目を合わせ、見送る……。
万希子さんと詩織の目が合い、互いに頷く……潮時を見計らった詩織が私と交差し「適度」な距離にまでシフォンに歩み寄った……。
「今日はありがとうございました……お疲れ様です。お先に失礼します……」
シフォン、マネージャーに深く一礼した詩織……万希子さんや他の愛人形達もそれに続く……。
「おいおいおいおいっ……お先に失礼しますぅだとぉ……?何言ってんだテメェら。ったくそういうスカした態度が気に入らねぇんだよっ……!」
「シフォンさんっ、もういい加減にして下さいっ」
子供を叱る様にマネージャーが言う……。
「聞いてんのかよっ、バカアイドルがっ……!」
「シフォンさんっ……!」
マネージャーの言う事も聞かず、何かに取り憑かれ、狂躁するシフォン……。
諌め、叱っても聞く耳を持たないシフォンに落胆し、マネージャーは切なくため息をついて立ち尽くす。
「お先に失礼します……」
再び詩織が言った……キャロルアンが出口へ向かう。モカ、モコ、雪、アリス、流花、葵が続き、テレビ局のスタッフ達に挨拶してスタジオを出てゆく……。
「まだ話は終わってねぇんだよっ……!」
シフォンが怒り、叫ぶ。
誰もシフォンに応えない……マネージャーでさえも。
「おうっ、シカトかよっ葵ちゃんよぅ……少しばかり男にチヤホヤされてるからっていい気になってんじゃねぇぞっ……ってか、本当はキモい男どもとか思ってんじゃねぇの。そのドロドロした腹黒い性格でさぁ……!」
スタジオから出ようとしていた葵を狙い撃ちし、その背中に罵声を浴びせるシフォン……。
あの「たまらない」唇を噛み締め、うっすらと涙を溜めた「瞳」で振り返り、シフォンを見つめる葵……。
「ちっ……始まったよっ、その偽善目線っ……!」
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