第37話
「それは……」
言い淀む流花。
「雪ちゃん……」
アリスが雪を見て、問う……。
「と言われても……雪と流花っちは、飛び出した万希子さんを追いかけて、その後の事は……」
『マイマイ……』
首を傾げながら、流花と雪は私に迫る。
「えぇと……それは……」
「舞さんは、何も悪くはありません」
万希子さんが、きっぱりと言う。
「でもさ、マイマイがプロデューサーとやり合ったのはホントの事なんでしょ……下手したらマイマイ、クビになっちゃうかもよ」
物怖じしないアリスが、あっさりと言った。
「えぇぇぇっ……マイマイ辞めちゃうのぉ……」
本心なのか、演技なのか……戦略的な潤んだ瞳で私を見つめる葵。
事の詳細はプロデューサーによって、もう社長に伝わっているに違いない。ここに社長が来るのだろうか……私の解雇を告げに……。
「そんなの嫌です……私達のマネージャーは舞さんだけです……辞めさせられるなんて私、絶対に嫌です!」
万希子さんが感情を荒げた……普段の佇まいからは想像もつかない剣幕に、メンバーも私も驚く。
「そうだねー。せっかくマイマイと仲良くなったのに辞めさせられるだ何だのってアリス、テンションダウンでやる気なくなっちゃったなぁ……マイマイが辞めるんなら、アリスもヴィーラヴ辞めようかな……」
作為的な声と表情を創り、あらぬ方向へ話を蹴り出すアリス。
「キャロも、あのプロデューサーのやり方はちょっと気に入らないな」
蹴られた話を、キャロルアンが受ける。
「キャロちゃんに賛成……流花もあのプロデューサーには本当にムカついた」
「雪もそう思う……あんな言い方されたら、誰でも辞めたくなっちゃうよ」
『じゃあ、皆で辞めちゃえ』
「えぇぇ、皆が辞めちゃうんなら葵も……」
パスが繋がってゆき、詩織の「足元」にメンバーの想いが集約された。
「このまま皆で社長室へ行くよ。マイマイが辞めさせられるなんて許せないって……もし礼子さんが聞き入れてくれなかったら私達にも考えがある……皆、それでいいよね」
詩織の解散をも匂わせた決意に、誰ひとり反対しない……今にも社長室に駆け出しそうな勢いと気概が、彼女達の躰、瞳から漲る。
「ちょっと皆、待って……」
私なんかの事で、大袈裟にはしたくない……彼女達が全員辞める理由もない。止めなくては……しかし、言葉が、行動が続かない。
「さぁ、行こう……」
私を見限り、詩織がエレベーターホールに躰を向ける。
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