第4話 秋雨の中で(わかば)
ここ一週間、とにかくひどい咳と鼻水の風邪をひいていた。会社からは「子供を相手にした仕事である以上、休んでもらう他にない」ということで、小さな事務作業を数時間した以上にやれることは無し。すぐに早退する日々が続いていた。
とはいえ、煙草を吸わなくなったわけでは、当然なかった。というか、本数は健康であったときよりも若干増えている。普段は日に5本程度で、この一週間は7~10本といったところだ。というのも、喫煙をした後の一時間ほどは咳がおとなしくなるからだった。その因果関係は
咳が原因で、腰が痛い。背中と腹筋のあたりも筋肉痛だ。それほどの衝撃を受ける程に体調を崩したことも久しぶりで、その事実さえ忘れてしまっていた自分は、多少落ち着くならばと手軽な手段に身を委ねたのだ。もちろん自制はしている。だから日に一箱(20本)を吸うなどというバカげたことはしていない。
とにかく、時間が出来たため、すこし物を考える程度の余裕を持つことはできた。だからこうして、長らく停滞していた執筆にも手を出すこともできている(普段は心身ともに使い切って、帰れば食事も風呂も後回しにして眠ってしまう程に暇がない)。あんなこと、こんなこと。将来の自分像から下卑た股間が反応するような妄想まで、あんなことこんなこと。
仕事だけのことを考えれば、それだけ仕事に責任を持たせてもらえるようになったという事だ。それ自体は悪い事ではない。しかし、体調を崩してしまったことは、何故か「自己管理さえできていれば」等、その他どうしようもない後悔や自分の不甲斐なさが際立って脳内を駆け巡るのはどうしてなのか?
週に6日の仕事である。休日として使える1日は大半を布団の中で過ごす。たとえ床に
寝て、食事を摂り、薬を飲んで布団に戻る。仕事には
どこか遠くの山に行って、のんびり歩いていたい。風の静かな海で一日釣り糸を垂らしているのも魅力的だ。とにかく、この蟻地獄のような生活から抜け出せるのであれば……。吐いた煙草の煙だけが、自由に風に運ばれ消えていく。それを見ているだけでも憂鬱だ。
そろそろ夜が明ける。
マスクは鬱陶しくてつけていない、生活リズムが乱れつつある9月28日の朝方。
チェーンスモーキング 鹿爪 拓 @cube-apple
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