刻一刻

緩やかなリズムで回り続ける扇風機の音と力いっぱい鳴く蝉の声で、夏の時間は止まる。汗をかいたグラスの中で転がる氷と僅かな風が揺らしていく鈴の音で、夏の時間は動く。少し動いて、しばらく止まる。紙上に貼り付けたように動かない入道雲がよく見える、無音の風が快適に冷やした部屋で、私はそんな情景を読む。蝉の声なんて届かない。常温で充分なお茶のグラスは濡れたり氷が溶けたりなんてしない。揺れて鳴る風流な小物も、ない。夏の時間は、暮れていく空の速度で、止まりながら動く。この部屋で、私の時間はいつの季節だって止まったままみたいだ。

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