空は何色

薄く伸ばした水を伝って、色が滲み広がるのを見る。先の方へいくに連れて、細く淡く離散する空の色は、沢山の人がそう見えると言う空の色とは違う。ざらついたキャンバスだけが、僕の目であってくれる。僕自身の口ですら再現しえない世界の色を、ここにはありのまま残すことが許される。いつか遠い先の僕がいなくなった未来で誰かにこの色を知って欲しいような、あるいはいっそ、今と変わらず誰にも知られずに朽ちてしまえばいいような、ふたつの気持ちの狭間で揺れる僕のように、色のついた水は緩やかな曲線で流れ落ちる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る