五
『受ケ留愛斗へ
ずっと前から好きでした!
なぜこのような形で告白を決意したというと、どうやら私はスポーツはよく攻めるけど、恋は奥手みたいだから?かな…(笑)
実は私、愛斗が私からナンパを助けた時以前に愛斗の事気になっていたみたい。それは中学一年生の時、愛斗は覚えてないと思うけど、私達は同じクラスだったの。さらに席も隣だったよ!?奇跡なのかな…(笑)
そうそう、あの時、私が消しゴムをなくしたとき、私はまだ出会ったばかりで慣れないクラスで貸してと言う勇気が無かったの。
その時、静かに消しゴムを貸してくれたのは、愛斗だったの。あの時の愛斗のクールな瞳は私をキュン死にさせるかと思ったよ(笑)
私はそれから、彼にどんどん惹かれていったの。二年生の時は違うクラスになっちゃったけど、愛斗が部活をしているところを陰でずっと見ていたときもあったんだ(笑)
それから三年生になったら、同じクラスで私は嬉しくて家でずっと飛び跳ねてたんだ(笑)
愛斗がナンパの男に「僕の彼女に何か用ですか?」って言ったときは、気を失うと思ったよ。嬉しすぎて(笑)
私は自然に接しようと必死だったけど、無理だったみたい(笑)誤解させてごめんね!
私はずっと前から好きでした!
高城明央より』
「…。長い!長すぎる!そして重すぎる!何やってるの?私…!」
明央は、愛斗に渡すラブレターを書いていた。明央は真海が言ったように愛斗に恋に落ちていた。しかも、かなり前から。
「これじゃあ、愛斗に重いって思われちゃうよ~!…せっかく愛斗に下の名前で呼んでもらうことに成功したんだから、この調子で…!」
「明央…、僕はずっと前から、好きだったぜ…!」
「私も…。嬉しい…!」
「何変なこと言ってんの?ねぇちゃん…」
「ぎゃぁーーー!!!」途中でノックもしないで入ってきた妹に、見られた明央は、ベットに顔をうずめ、叫んだ。ベットのおかげで、部屋だけが聞こえる声のボリュームになっていた。明央は、息抜きに近くの公園に来ていた。
「私は、どうすれば良いの?この気持ちをどこにぶつければ良いの?」
明央は、知らず知らずのうちに泣いていた。静かに静かに。
「大丈夫か?」聞き覚えのある声に反応した明央は、目を疑った。そこには、愛斗が立っているのだ。
「…隣良いか?」
明央は、緊張で声が出ず、首を縦に振るしかなかった。それから、愛斗は何も言わず、スマホをいじっていた。
「愛斗は何でここにいるの?」
「ここにいちゃダメか?」
「ううん…。」
私は微笑みながら、この瞬間が一生続けば良いと本気で思った。でも、一瞬は一瞬だった。
「もう行かなきゃ。暗くなるし。じゃあな。」
「…え。待って!」
「どうした?」
どうしよどうしよどうしよ!つい反射的に言っちゃったけど、告白する勇気が出ないよぉ!このままじゃ、愛斗が行っちゃう…。そう思いいざ声を出そうとすると、
「あ、愛斗じゃん!」と真海の声が聞こえた。真海は愛斗に手を振りながら愛斗に向かって走ってくる。
「奇遇だね!一緒に帰ろ!?」
「奇遇じゃねぇだろ。荷物重たいから、一緒に来てって言ったのは、どこのどいつだよ。」
「えへへへ、ごめんごめん!んじゃ行こっか!」
そう言いながら、愛斗と真海は、帰ってしまった。
「そっか。私を慰めるために隣座った訳じゃないんだ…。何妄想してんだろ、私の馬鹿…。」
私は愛斗達が通った道を通り家に帰った。家族の前では自然に接し、妹の前では、何のことかと首を傾げその場をしのいだ。私はお風呂に入ると、鼻まで湯船に浸かりブクブクしながら考えた。どうしたら愛斗に振り向いてくれるか、どうしたら目と目を見て話せるか、結局答えは出ないまま、次の日を迎えてしまった。
結局、愛斗に話し掛けずに真海と会話をしていた。
「そーいえばさ、夏休みに夏祭りあるよね!」
確かに、愛斗の事を考えすぎて、忘れていた。
「みんなで行こうよ!」
「私、行く気になれないなぁ。」
「えぇ、真海と行きたいのに!…んじゃ、愛斗と行こっかなぁ~」
「私も行く!」
「え、じゃあ愛斗はいっか!」
「やっぱ、行かない。」
「んじゃ、愛斗と…」
「行く!」
「明央、愛斗と行きたいのねぇ」
「べ、別にそんなんじゃ…。」
「んじゃ、愛斗誘わないよ?」
「ダメ!」
「分かったから!んじゃ、約束ね!」
私は、今すぐ飛び跳ねたい気持ちだった。私はその気持ちをぐっと堪え、我慢した。私はこれが決まったと同時に、心に決めた。
夏祭り当日に、愛斗に告白すると。
そして、帰りの会が終わり、みんなが続々と帰っていく。
「真海ー?」
「んー?」
「今日一緒に帰らない?」
真海は考えている。
「愛斗ー!?っていないし、こりゃあまた先に帰りやがったな!どーせ、追いつかないし…。そうだね!たまには、愛斗以外も良いかも!」
私は、真海の話している内容を理解できないままうなずいて、真海と一緒に歩いていた。
真海は、色々な話をしてくれた。殆ど愛斗が関わっていた。私は意を決して、
「真海ってさ、愛斗とどういう関係なの?」
さっきまで、にこやかだった顔は真剣そのもので私の本気が伝わったのか、それとも、真海も意を決して話すのか、どちらにしても私には重大だった。
「明央だったら、いっか。誰にも言わないでね。内緒だよ?」
私は唾を飲み込み、うなずいた。
「実は、私達。一緒に住んでいるの。」
「え?」
どういうこと?真海と愛斗が一緒に住んでいる?話が読めない。もしかしたら、真海の嘘?だったら、あんな前振りはしないはず。って事は本当のこと?頭が追いつかないよ。
「家族関係で繋がっているの?」
すると真海は追い打ちをかけるように、
「ううん。赤の他人だよ。」
「赤の他人なのに、一緒に住んでいるの!?」
真海はおかしい。それとも、私がおかしいのか?今世間は、赤の他人と住むことが普通なのか?シェアハウス?とは、訳が違いそうだ。でも、昨日愛斗と真海との会話が繋がった。一緒に住んでいるから、買い物一緒に行ったんだ。私は、とりあえず私に関わることを覚悟を決めて、聞いてみた。
「真海は、愛斗と付き合ってるの?」
真海は私を見た後、下を向いてしまった。しばらく真海は俯いたままだった。私は、彼女の返事を待っていた。やっと口を開いた真海の口から聞こえたのは、
「違うよ…。」の一声だった。
私は、期待と不安のこもった「そっか。」という返事をした。
とりあえず、真海は愛斗と付き合っていない。安堵したのも束の間、次の質問をした。
「真海は愛斗の事、好きなの?」
「今日は、明央積極的だなー。あたしゃ、こわいよ。ブルブル。」
「聞いてるの。」
私の気持ちが伝わったのだろうか、真海は口を閉じてしまった。そして、少し経つと、
「好きだよ。」
私は横を見た。そこには、いつも通りに見えるし、恋をした乙女のようにも見える真海がいた。私は、女ながらに可愛いと思ってしまった。やっぱり恋をすると、女の子は可愛いくなるんだなあ。そう思った。
「私も、愛斗の事好きだよ。」
「やっぱりね。」
「え?何で?」
「だって明央、授業中も休み時間もずっと愛斗の事見てるもん!」
「え?ガチ?」
真海は、いつもの顔で笑っていた。
「良い?私達は今から、恋のライバルね!とられても恨みっこ無しね!」
「うん!わかったわかった!」
真海と私は、声を上げて笑っていた。
今日の会話で、一段と、仲が良くなったと思った。私は、真海に譲る気は無い。
私は、祭りの日に告白するのをやめる気など無かった。
「待ってろ、愛斗!」
私は、思いっきりベットに顔を埋めた。
「何してんの…。ねえちゃん。」
今日も、明央の家は騒がしかった。
ゴミ箱にはビリビリになっていたラブレターが入っていた。
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