一学期も終盤にさしかかり、真海もこのクラスに慣れてきたと思う。僕は、夏休みの予定を考えていた。すると真海が、

 「あのさ、今週の日曜日に友達と買い物行くんだけどさ、一緒に行かない?」

 と、誘われ僕は断ったが、真海が何度もお願いするので、僕は渋々了解した。

 そして、約束の日曜日。待ち合わせ場所の駅前で待っていると、真海が友達を連れて、やって来た。

 「待たせちゃったね!この二人は友達のちなみっちと、めいかっちね!」

 この二人は、隣のクラスの都田とだ ちなみに、同じクラスの高城明央たかぎめいかか。

 「よろしく。てか、男子一人って辛いんだけど?」

 すると真海は、

 「良いの!良いの!どうせ仲良くなるんだし!」

 「真海のその自信はどこ来てるの?」

 僕は、そう言って、とりあえずスマホに目を移した。僕らは、電車に乗り、レイクタウンと言う大型ショッピングモールに行くことにした。駅で五分ぐらいなので、すぐ着いた。僕は、初めてレイクタウンにきた。大きいというぐらいしか印象になかった。

 僕は、最初に洋服探しに付き合わされた。女子達は可愛い服で盛り上がっている。僕は興味がないのでスマホをいじっていた。すると真海が、

 「どう?似合う!?」と言ってきたので、僕はスマホを見たまま、

 「似合ってるよー」と無愛想に言った。

 その後は、アクセサリーも買ったり、食事を摂ったり、プリクラも撮ったりした。僕は近くの机に座っていたが、強引に引っ張られて撮られた。

 最後に行こうと指さしたのは、ゲームセンターだった。僕は気配を消し、逃げようと思ったがすぐに真海に捕まった。ゲームセンターは賑わっていた。音はうるさく、真海達が何を言っているか耳を澄まさないと聞こえなかった。真海達はクレーンゲームをして、はしゃいでいた。僕は、三歩後ろで見守っていた。

 「んー、獲れない!愛斗!」

 「何ですか?」

 「もー、男なら獲るもんだよ!」

 「君は、男の基準がおかしいよ。」

 僕は、仕方なくクレーンゲームの前に立った。僕は、慣れない手つきでいじった。

 「もしかして愛斗、初めて?」

 「話し掛けないで、集中出来ない。」

 なんて言うのは冗談で、久しぶりのクレーンゲームでテンションがおかしくなりそうだったので、とりあえず落ち着こうとして言った一言が物凄く達人感をかもし出してしまった。真海は、珍しくしょげていた。僕は真海に一瞥もせずクレーンゲームをした。真海が黙ってくれたお陰なのか知らないが、僕は一発で景品を獲ることが出来た。

 しょげていた真海も、目を輝かせ僕の獲った景品を奪い抱きついた。

 「ありがとうおーー!!」

 「おいおい。」

 「ごめん、いつもの癖で…」

 「君は、僕に一回も抱きついたことないだろ?」

 周りは大爆笑した。それから二人にも景品をねだられ、仕方なく僕は獲った。僕が一発で獲るもんだから、周りの人達が寄ってきてしまった。僕はちょっとした有名人になってしまった気がする。僕たちは、時間を理由にクレーンゲームゾーンから抜け出した。

 最後にプリクラを撮ることになった。僕は、外で待っていると言ったが、真海が無理やり引っ張ってきた。仕方なくプリクラを撮ることにした。最後に飾りは、女子陣に任せた。

 日も暮れてきたので、僕らは解散した。やっと地獄から抜け出せて、腕を伸ばすと、真海が

 「どっちも可愛かったでしょ?どっちがタイプだった?」

 と聞いてきた。

 「は?興味ない。」

 「でも、可愛かったでしょ?」

 「はいはい。」

 そんな他愛もない会話をしながら、帰った。次の日学校へ行くと、途中で高城に会った。高城は、

 「昨日は楽しかったね!これからもよろしくね、愛斗!」

 「お、おう。こちらこそ、高城さん。」

 「んもぉ、堅いなぁ愛斗は。明央で良いよ!」

 「んじゃ、明央…?」

 「よろしくね!」

 これでまた、下の名前で呼ぶ女子クラスメイトが増えてしまった。面倒な事がまた起こりそうだ。まぁ、どうでもいいが。今日は、特にこれといった出来事がなく、平和な一日だった。あ、いつものことか。

 僕は、部活をして帰ると、途中で高城がナンパに遭っていた。僕は、あまり関わりたくないが、明央と目が合い助けを求める目で見つめられた。仕方なく僕は明央の方へ行き、

 「僕の彼女に何か用ですか?」

 と言った。明央がとても驚いた様子でこちらを見ている。するとナンパしてきた男が、

 「うるせぇ!」と怒鳴って殴ろうとしたが、僕のお得意の愛斗コンバットでナンパを撃退した。元から、愛斗コンバットをすれば良かったと今更ながらに後悔した。ナンパから逃げてきた後、

 「ありがとう…」と明央がお礼を言った。

 「おう。それより大丈夫か。顔が赤いぞ?」

 「だって、愛斗が彼女とかなんとかとか言うから…」

 「なんか言ったか?」

 僕はそう言って、明央の顔に自分の顔を近づけると、明央は小さな悲鳴をあげて、全速力で去っていった。

 「なんか、悪いことしたっけ?…まいっか。」

 そう言って一人で家に帰った。

 それまた次の日に、明央に会った。明央は僕と目が合うと、顔を赤らめ、逃げてしまう。やっぱり僕は何かしてしまったのかと考えたが、思いつかない。なので、真海に事情を話すと、真海は、

 「それって、愛斗の事が好きなんじゃない!?」

 「いやいや、そんなわけない。」

 「でも!顔を赤くして逃げちゃうんでしょ?それは愛斗の事が好きだけど、恥ずかしくて、顔を見れないんだよ!」

 「妄想を膨らませるな。」

 「一目惚れかなぁ」

 「おい、やめろ。」

 絶対に違う。違うと信じたい。そもそもこんな自分に恋をするのだろうか。僕は絶対に違うと信じた。僕は考えることをやめ、部活に集中した。絶対にあり得ない。全く真海は適当な事を言う。もうこれ以上人と関わりたくない。そう思いながら、次の日を寝て待った。

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