僕達はいつも通りに学校へ行った。今日は学校で全校集会があった。僕達は整列して、校長先生の話を聞いていたら、突然ドアが開いてそこから、複数のヤンキーが入ってきた。ヤンキーは釘バットや歪な金属バットを持っている。ざっと五十はいるだろう。所々で悲鳴が聞こえている。すると悲鳴の声を上回る叫び声が聞こえた。

 「俺をこんなようにしやがった奴はどこだぁ!?こっちは、五十をもの仲間がいるんだぞ!」

 すると後ろから、「どけ」と言って金髪の男が出てきた。その男は、細身だが、がたいは良さそうだ。更にルックスも良い。つまりイケメンって事だ。

 「俺はなぁ、仲間をボコボコにした奴が許せねぇんだよ。」

 こういう時は、目立たない事が肝心だ。そう思い僕は、気配を消した。すると真海が

 「ちょっと待ちなさい!」

 と言って飛び出した。

 「君は僕の思いを踏みにじるね」と小声で言った。

 「元はと言えば、あなたが襲おうとしたんでしょ!」

 「ちげぇよ!アイツは俺の彼女だよ!」

 ヤンキーと真海の口喧嘩が始まったようだ。僕が止めようと、行こうとしたら、「ちょっと待って下さい!」と言う声が聞こえた。全校生徒は声の方へと振り返る。するとそこには昨日の子らしき女の子がいた。彼女はひどく怯えている。

 「おー、いたいたぁ」

 するとヤンキーは、彼女が寄ってきた瞬間に彼女を叩いた。

 「何俺以外に、男作ってんだよ!?」

 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

 するとヤンキーは、手に持っていたバットを振り上げた。その瞬間、真海が止めように入った。僕は急いで止めに入ったが、間に合わなかった。鈍い音と共に、真海は地面に倒れ込んだ。僕は、何も感じなかったが、一応、向かった。

 「何やってんだ!!」

 「おめぇは、俺に恥掻かせやがって…!」

 そしてまたヤンキーは、バットを振り上げ振り下ろした。僕はそのバットを止めバットを握り潰した。ヤンキーのあの焦り顔は見物だった。そして、僕はヤンキーを愛斗コンバットで二、三メートル吹っ飛ばした。さすがにやり過ぎたが、ヤンキー達が恐怖を抱いている。吹っ飛んだヤンキーは、また僕を襲おうと走ってきた。僕は構えたが、その意味は無かった。金髪の男がやつを思いっきり殴ったのである。僕は戸惑った。すると金髪の男が

 「申し訳ねぇ。まさかコイツがあんたの大切な人を殴ったのは、面目ねぇ。しかし、おめぇがアイツを殴った落とし前は付けさせて貰うぜ。」

 そう言い残し、「帰るぞ」そう言ってヤンキー達は帰って行った。帰り際、金髪の男が、「今日五時、中台公園で待ってる…。」と聞こえたときには、どこかへ行ってしまっていた。

 僕は真海を抱え保健室へと行った。真海の手当てが終わるまで保健室の前で待っていた。するとそこに、ヤンキーの彼女と言われていた女の子がやって来た。彼女が僕に話しかけようと、あたふたしていると「どうしたの?」と言った。すると彼女は、

 「真海ちゃんは…?」

 「もしかして、三年五組か?」

 「…もしかして、いつもの独りぼっちの?」

 「失礼だな、おい。…んまぁな。」

 僕は、彼女に聞きたかったことを聞いた

 「…つまり、一方的な好意って事なんだな。」

 「そうなの。私はずっと断り続けてるのに、向こうが一方的に寄ってくるから…。」

 僕達が会話をしていると、保健室のドアが開いた。そこから保健の先生が出てきた。その後ろには、真海が立っていた。

 「えへへへ、怪我しちゃった。」

 そこには腕に包帯が巻かれた彼女がいた。

 「大丈夫か?」

 「うん…」

 僕は、心の底から何かがが湧いてきた。怒りでは無い気がする。僕はその時、金髪の男が言った言葉が頭に浮かんできた。

 「ちょっと行ってくる。」

 そう言って、僕は保健室を後にした。

 日は落ちかけ、キンコンカンコンと聴き慣れた五時を知らせるチャイムが鳴っている。受ケ留愛斗はヤンキー達のボス、金髪の男を待っていた。すると遠くの方から弱そうな奴数名と、金髪の男が歩いてきた。

 「待たせたな。…さぁ、とっとと終わらせちまおうぜ、最近は警察がうろちょろしてるからな。」

 「ああ。」

 金髪の男が拳を構え、思いっきり殴りかかろうとした。僕も拳を構え、守備の体制に入った。奴のパンチは中々の威力だった。僕は一瞬にして、

 「お前、ボクシング経験者だな?」

 「よく分かったな。」

 「その構え方は、ボクシングの基本スタイルだからな。」

 「お前も経験者か?」

 「んまぁな。」

 闘いはかなりの時間を要していた。強い風が吹こうとも、雨が降ろうとも、僕達は闘い続けていた。

 「先輩!これ以上やったら、風邪引いちまいますよ!」

 「うるせぇ。これは一対一の真剣勝負だ。ここで止めちまったら、仁義にかけんだろ!」

 「そこまで思ってるんなら、これでお終いにしてやるよ。」

 そう言い、僕は心を研ぎ澄まそうと目を閉じた。それを隙と思った金髪の男は渾身の力を込め、思いっきり殴りかかろうとした。その瞬間、金髪の男が物凄い勢いで吹っ飛んだ。

 「こんな技、どんな競技でも見た事ねぇよ…。」

 「何せ、これはボクシング、空手の合わせ技だからな。」

 「てめぇ、何なんだよ…。」

 金髪の男は微笑みながらそう言った。

 「初めてだよ、こんなに吹っ飛んだの」

 「へへへ」とぎこちない愛想笑いをした。さっきまでの気持ちは心の底から消え去っていた。

 「そういえば、名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」

 「俺は、隼人。鳥井 隼人とりいはやとだ。言ってなかったか?」

 僕は隼人を起き上がらせようとした。すると後ろから、「ちょっと待ちなさい!」と声と共に、今一番会いたくない人に会ってしまった。

 「君達、何をしてるんだ!ちょっと来なさい。」

 僕らは顔を見合わせ、青ざめた。僕達は今交番にいる。警察官が色々聞いてくるが、案の定、僕達は黙秘したままだった。警察官が痺れを切らしていると、「ちょっと待ちなさい!」と言う声が聞こえた。

 そこには、あのヤンキーの彼女が立っていた。

 「その人達を解放して。ほらここに警視長官の証明書もあるから。」

 「え?警視長官?」

 すると、警察官は慌てた様子で僕達を解放してくれた。僕達は彼女にお礼を言った。

 「まさかお前が警視長官の娘だったとはな!…てかこんな大がかりな事して良いのか?」

 「良いのよ。私の父、私の事好きすぎて甘々だから。」

 「なるほど」僕達は頷き、帰路をたどった。

 「それにしても、アイツ、凄い人の娘さんに手を出したな」

 「ホントよ。」

 後日、あのヤンキーから謝ってきて、この一件は一件落着した。

 それから、真海は腕が使えないなどの理由を付け、僕をこき使った。僕は面倒くさかったが、仕方なく世話をした。

 「愛斗ぉー?」

 「何だよ。」

 「私お風呂入りたいー!」

 「無理だろ。我慢しろ。」

 「入りたいいいいいいいい!」

 「真海は、僕のことを異性だと思ってんの?」

 「見たくないの!?」

 「興味ねえわ。」

 「本当ぉ?」

 そう言い、真海は肩を出してきたが、

 「だったら、友達に言って一緒に洗ってこいよ。」

 と、軽く流した。

 「えー、愛斗友達じゃんー」

 「“女”友達だ。猿か、真海は。」

 「ウキーー!!」

 と真海は叫び、僕に襲いかかってきた。本当に腕使えないのか?そう思った。

 「痛い痛い痛い、重い。」

 「重いは余計じゃい!」

 蹴られた。僕は仕方なく、真海とお風呂に入ることにした。

 「入るぞ?」

 「良いよー!」

 そこには、スクール水着を着た真海がいた。水着を着るを条件に承諾した。まあ、湯気でぼんやりとしか真海の姿は見えないが。

 「じゃあ、最初に頭洗ってくれる?」

 「はいはい。」

 そう言って、僕は真海の髪を洗った。真海の髪はサラサラで凄かった。洗った髪を流していると、真海は、

 「次は、…体、お願いできる…?」

 と何故だか照れている。

 「洗えるところまでな。」

 そう言って、僕は真海の体を見た。いくら子供とはいえ、中学三年生だ。胸は膨らんでいる。

 「どこまで洗って良いんだ?」

 「…全身?」

 「馬鹿か。」

 僕は最新の注意をはらって真海の体を洗った。

 「ああん!ああー、そこぉダメェ!!」

 「馬鹿か、」

 「てへぺろー」

 ったく、そう思いながら、真海の体を洗っていると、真海が急にくしゃみをした。その拍子に、泡が舞った。運悪く、僕の目に泡が入った。

 「目に泡がああー!取りあえず、シャワーを!」

 確かこの辺に。僕は、勘でハンドルらしきものを握った。しかし僕の手には、ハンドルの硬さは無かった。あったのは、マシュマロだった。ん?マシュマロ?すると真海が

 「ひゃんっ!」

 と悲鳴をあげた。

 「あ、あった。」

 そう言って僕はハンドルをひねった。瞬く間にシャワーは流れ、僕の目は景色を捉えられるようになった。真海は自分の胸を抱えている。

 「ん?どした?」

 「愛斗のバカぁぁぁ!!!」

 僕はやっと、やてしまった事に気づいた。

 それからというもの真海は口を聞いてくれなかった。

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