二章 七話  破壊のイメージ

「・・くっ!」


獣の突進を阻止するために矢を放つ灰。けど、直撃させてるのに一向にスピードが落ちない!


「ガァァ!」


速度の乗った突進。その先には・・灰!


「させるかぁ!」


突進を正面から受け止める!


「うらああああああ!」


出せる力を全て使い押し返そうとしても少しづつ押されてい。


「がっ⁉」


結局、止めることが出来ず正門まで吹き飛ばされた。


「ごほ!ごほ!」


・・事前に硬質化を強めておいて良かった・・下手すれば背骨が折れていたかも。


「馬鹿!無茶しやがって」


けど必死に庇ったおかげで灰はちゃんと避けれてる。


「・・やっぱり今のままじゃ相手にならないや」


一割じゃ全然足りない。昨日と同じかそれ以上じゃないとダメだ。


「・・馬鹿なこと考えんなよ」


俺に釘をさす灰。心配しすぎだっての。


「・・一体だけならば私一人で事足ります」


「そうだな。援護するから前は任せる」


ツバキが接近しようとした・・その時だった。


「・・ガァァァ!」

「「「⁉」」」


・・敵の乱入⁉


現れた獣は側面からツバキを狙う。


「くっ!」


ツバキはギリギリで回避をし、そのまま距離を取る。


「・・奴さん本気だな」


追加の登場するデカい獣。その数・・十はくだらない。


「アルム。連携を意識しろ。一人でやったら死ぬぞ!」


「・・邪魔はしないでくださいね」


「咲夜!分かってるな・・使うなよ!」

「「ガァァァ!」」


一斉に襲いかかる獣たち。真正面からは到底太刀打ちできない!


「・・装填!」


正門を利用し高く飛び、後ろにいる獣たち目掛け矢を放つ灰。矢で足を地面に張り付けたり目を攻撃して回避を強要させるなど、獣の足止めをしていく


「はぁっ‼」


そして足の止まらなかった獣を、ツバキは一手に引き受ける。


一閃、反応される前に斬り。

二閃、反撃される前に斬り。

三閃、攻撃を避けつつ斬る。


流れるように斬撃を放ち獣たちを圧倒するツバキ。けれど、獣たちの固い毛のせいで決定的なダメージは与えられていない。


「・・グルル」


戦況を打破しようと、一匹が灰へと標的を変え、向かっていく。


「行かせるかよ!」


それを横から殴って阻止する。一割でも足止めくらいならできる!


・・このままいけば全匹倒せるだろう。


けど時間が経つにつれ、こちらが少しづつ不利になっていく。


「くそ、こんだけ打ち込んでるんだ。少しは辛そうにしたらどうだ!」


灰の攻撃に慣れ、段々と怯まなくなっていく獣たち。


「「ガァァ!」」

「くっ!」


ツバキも苦戦している・・体力が万全じゃないせいで!


「がっ!」「ぐぅ!」


鈍い音と共に上がる苦痛を含んだ声。


「灰!ツバキ!」


このままじゃ二人が・・!


・・約束を破ることになるかもしれない・・けど!


「こんな時に使わないでいつ使うんだ!」



・・俺はイメージする。



絶対的な力を。自信を中心とした理想の結果を

何もかもを弾く鋼鉄の体を

万物を破壊する拳を・・二人を助ける強さを!

そう。想い描くは・・


「常勝の存在!」


全身に武力が巡り、体の奥底から力が溢れ出てくる。


「うぉぉぉおおおおおお!」


溜め込んでいた怒りを吐き出すように雄叫びを上げる。


「邪魔だぁ!」


目の前の一匹を力の限り殴り飛ばす。


「お前らの相手は・・・・俺だぁ‼」


灰に止めを刺そうと腕を振り上げる獣の元へと全速力で接近する。


「「・・ガァァアア!」」


危険を察知した獣たちは標的を俺に変え、上げていた腕を振り下ろす。


「はぁぁあああ!」


だが、俺はそんなことはお構いなしに腕ごと破壊し「ガァ⁉」牙をへし折り「グギャ!」腹に大穴を作る「・・ガ・・」獣たちはピクリとも動くことなく霧散していった。


「次ぃ!」


霧散したことを確認し、今度はツバキに群がる獣どもへと接近する。


「・・っ⁉咲夜さん⁉」


俺の登場に驚くツバキ。その表情には明らかな疲れが見える。


「待ってろ。すぐにそいつらを・・」


「「グガァァア!」」


四方八方、上下左右。獣たちはあらゆる角度から俺を排除しようと襲いかかってくる。


「・・野良犬風情が調子に乗るなぁ!」


地面を全力で殴る!


「「グリャァァ⁉」」


発生した衝撃波とによって吹き飛ぶ獣ども。が、この程度ではびくともしないようでピンピンしていやがる。


・・早く倒さないと。


「消えろぉ!」


がむしゃらに近づき、がむしゃらに拳を放つ。何度も何度も何度も。


獣たちも避けるが十回に一回は当たる。当たった箇所は破壊され原型が無くなっていく。


右腕、左脇腹、左足。

次々と部位が無くなり動けなくなる獣。が、おかまいなしに容赦なく殴り潰していく。


「・・はっ・・はっ」


・・全て始末し終わった時には辺り一面がクレーターになっていた。


けど、これで終わっ・・ぐ!


「・・ぐうウウうぅぁァ‼」


戦いたいという衝動が全身を這いまわり理性を奪おうとしてくる。必死に抵抗するが衝動は止まることなく強まっていく!


「咲夜!」「咲夜さん!」


心配そうな顔をして近づいてくる・・ナニカ。


・・あれモ、敵・・?


「・・・・違う!」


見境を無くすな!


「灰・・頼む‼」


理性が飛びそうになりながらも、必死に友へと懇願する。


「・・よくやった。また学校でな」


状況を察した灰が俺の顎を強めに揺らしてくれる。


・・ああ、助かった。これで。


申し訳なさを抱きながら、俺は眠るように気絶した。

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