二章 六話 弓兵の実力
「はい。到着」
無事に学校正門へと到着。ここに獣たちはいないようだ。
「もういいですよね?下してください」
「・・?なに言ってるの?灰のとこまでこれで行くよ?」
「え⁉い、いいです!」
「いいんだね?じゃあ、出発・・」
このまま灰の元に向かおうとした時だった。
「「・・!」」
突如、両の指で数えられないほどの獣の群れが俺たちを包囲するように現れる。
「「グルル・・」」
じりじりと囲いを狭める獣たち。俺たちは正門を背中に獣たちと対峙する。
「降ろしてください。戦えないです」
・・顔を見ずとも戦う気満々だと分かる。
「降ろす代わりに神器能力むやみやたらに使ったり、一人で無茶はしないこと」
回復してない今の状態のツバキに全力では戦わせられない。
「従えません。この数を倒すのに神器能力は必須です」
その分析は正しいかもしれないけど・・それ、俺のことを計算に入れてないでしょ?
「・・雑魚は俺に任せてよ。ツバキは本丸のために温存してて」
それになんというか・・今の状況・・昨日のデカいのが出てきた時と似てる気がする。
「「ガァァ!」」
・・とはいえ、この数の大部分を相手取る実力は俺にはない。
「・・また使わなきゃなぁ」
始めようとした・・その時だった。
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
何かが耳もとを通り過ぎたかと思うと獣たちに突き刺さっていく。
「「グギャアアア!」」
獣たちには矢が突き刺さっている・・これは・・まさか!
俺は音が聞こえた方向・・校舎の方へと振り向く。
「・・・・」
そこには・・弓を構えた灰の姿があった。
「灰!」
「・・装填!」
間髪入れずに獣たちを狙撃する灰。灰から距離を取ろうと獣たちは俺たちから離れていく。
よし!今の内に!
・・俺はイメージする。
目の前の敵すべてをなぎ倒す力を・・
想い描くは・・
「常勝の存在!」
一割だけどこれで十分!
「オラァ!」
獣の群れに接近。一番近くの獣の横腹を貫いて一匹!
貫いた獣が霧散する前に敵に投げつけ視界を奪ったところを殴り倒し二匹!
足を狙い接近する獣にワザと足を噛ませ、噛ませたまま地面に蹴りつけ三匹!
「いつつ。ちょっと無茶だったか」
噛まれた足をさする。ケガはないけど痛いものは痛いな。
「「・・・・」」
一瞬で仲間をやられ警戒しているのか攻撃してこなくなる獣たち。
「二人とも大丈夫か?」
正門を飛び越え、灰が合流する。どうやら、ケガもなさそうだ。
「助かったよ灰。タイミングもばっちりだったし」
武力の感知が鋭い灰とはいえ見計らったかのようなだった。
「こんな時のためにお前に盗聴器を付けておいたからな」
サラッと問題発言をする灰。おいこら待てや。
「アルムには付けてないから安心してくれ」
「・・つけたら問答無用で斬ります」
その時は俺も全力で協力するようにしよう。
「さて、そんなことよりだな・・」
盗聴器をそんなことと断ち切り、どうしたものかという顔をする灰。
「・・数が多すぎたから倒しきれなかった。こいつらも頼むぞ」
「「ガァアアア!」」
ぞろぞろと正門を飛び越え現れる獣たち。数は今の三倍近く、元々の獣と合わせて四方を囲まれた状態になってしまう。
「何やってんだよ!」
次々と襲いかかってくる獣たちを対処しながら灰を攻める。
「こういうことは早く言ってください!」
これにはツバキもお怒りの様子だ。
「しょうがないだろう!この数を俺一人でなんて無理だ!」
俺の背後に隠れながら攻撃する灰。的確に射抜いてはいるがいかんせん数が多すぎて追い付いていない。
「神器使いが何言ってんだ‼さっさと神器能力使って倒せや!」
「俺の神器能力でそんなこと出来わけねぇだろ!」
・・神器能力のほとんどは攻撃向きのものなんだけど、灰の神器能力は特殊で攻撃力が全くない。
「ガァァ!」
敵の一匹が灰へと爪を振るう。弓兵である灰がどうにかなる間合いではない。
・・ただの弓兵であればだが。
「・・風よ!」
灰の手から放たれた突風が敵を吹き飛ばす。
・・神器使いは神器能力の他に「仕者の権能」と呼ばれる能力を持っている。
炎、水、光・・仕える神によって使用できるものは異なり「風神」に仕える灰は風の力を使うことが出来るということだ。
・・そう言えば。
「ツバキ!なんで仕者の権能を使わないの⁉」
ツバキが使うところを見たことがない。
「・・え」
何故か絶句するツバキ。
「私の権能は・・その」
「アルム!お前も仕者の権能を使え!」
「・・分かり、ました」
深く深呼吸をし覚悟を決めた顔をする。
・・なんか嫌な予感。
「ツバキ?ちょっ」「・・炎よ!」
豪炎が辺り一帯を包み込む。
「「ガァァァ⁉」」
炎に巻き込まれ、悶絶する獣たち。
「「あちちちち‼」」
こっちはあまりの暑さに悶絶する男たち。
・・三十秒後。
「「「・・・・」」」
獣のこんがり焼きと、俺と灰の蒸し焼きが完成していた。
「私・・炎の調節が苦手なんです」
・・ともかく、これで獣たちも全滅・・
「・・⁉嘘だろ⁉」
急に飛び起きる灰。
「二人とも気を付けろ!昨日のが来るぞ!」
・・昨日の。ってまさか⁉
「「ガァァ!」」
遠方からの轟音と共に、恐るべき速さで巨大な塊がこちらへと突進してくるのだった。
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